【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「わたくしはね、宮廷画家になりたいの。素晴らしいと思わない?! 皇宮の歴史を、この手で描いて刻んでいくの。わたくしはあなたとは違う形で、歴史にミラルダの名を残すわ……!」
キャンバスを見入るマリアの目頭がみるみる熱くなっていく。
何か言いたいのに、溢れそうになる想いが喉に詰まって言葉が出てこないのだった。
「ジルベルト殿下の事だけれど」
意表を突くようにその名が上がり、どきりとした。
ジルベルトは今頃、ガルヴァリエ公爵にミラルダとの婚約破棄を申し出ているはずだ。
まさかとは思うが、皇太子との婚約にミラルダが何らかの想いや未練を抱えているのではないかと心配になってしまう。
だが紡がれた言葉はマリアの予想とは全く違ったものだった。
「ジルベルト殿下の事で、あなたは、まだ知らなければならない事実がある」
「私が、知らねばならない、事実……?」
「ええそうよ、リュシエンヌ。殿下のお話をしっかりと、あなたが聞くの。あなたから尋ねるのよ。殿下の心の闇を救えるのは、あなただけ」