【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
このままでは呼吸困難、心臓も危篤になりそうだ。
心身ともに危ない状況からどうにか逃れようと、つい気に掛かっていた事を口に出してしまう。
「み、ミラルダに聞いたのですけどっ。殿下のことで私が知らねばならない事実があるって、殿下に自分で尋ねるようにって……何の事なのか、気になってしまって」
ジルベルトは一度、思案するように瞳を脇に逸らせた。そしてすぐに虚を突かれた顔をする。
「ミラルダは、君に何か話したのか?」
「いいえ、それ以上は、何も……っ」
ミラルダの言う話とは、ジルベルトが『二人の兄殺しの冷酷な皇太子』と言われる所以となった、三年前のあの凄惨な事件の事だろう。
「皇城に着くまでに済むような、短い話だ」
ふ、と息を吐いたジルベルトは、悪しき噂を覆す根拠となる真実を淡々と語ったのだった。
「……女性たちのお腹の子の命も、一緒に失われたのですね……?」
静かにうなづく彼の語り口に熱がこもらずとも、代わりにマリアの目頭がみるみる熱くなっていく。胸を裂かれそうになる事実を、ジルベルトはずっと一人きりで抱えてきたのだ。
二人の兄の凶暴性と愚王の素質を見抜き、彼らの性暴力の犠牲となった女性たちを匿い、証拠隠滅を図る前皇太子セルヴィウスらから守ろうとした。だが結果として彼女らの命を救う事が出来ず、陰惨な心の闇となってジルベルトを苦しめ続けている。
出世のために兄を殺した冷酷な皇太子と呼ばれるのならそれでいい。
被害者らとその家族の尊厳を守るためならば、甘んじて悪人になろうと——。
心身ともに危ない状況からどうにか逃れようと、つい気に掛かっていた事を口に出してしまう。
「み、ミラルダに聞いたのですけどっ。殿下のことで私が知らねばならない事実があるって、殿下に自分で尋ねるようにって……何の事なのか、気になってしまって」
ジルベルトは一度、思案するように瞳を脇に逸らせた。そしてすぐに虚を突かれた顔をする。
「ミラルダは、君に何か話したのか?」
「いいえ、それ以上は、何も……っ」
ミラルダの言う話とは、ジルベルトが『二人の兄殺しの冷酷な皇太子』と言われる所以となった、三年前のあの凄惨な事件の事だろう。
「皇城に着くまでに済むような、短い話だ」
ふ、と息を吐いたジルベルトは、悪しき噂を覆す根拠となる真実を淡々と語ったのだった。
「……女性たちのお腹の子の命も、一緒に失われたのですね……?」
静かにうなづく彼の語り口に熱がこもらずとも、代わりにマリアの目頭がみるみる熱くなっていく。胸を裂かれそうになる事実を、ジルベルトはずっと一人きりで抱えてきたのだ。
二人の兄の凶暴性と愚王の素質を見抜き、彼らの性暴力の犠牲となった女性たちを匿い、証拠隠滅を図る前皇太子セルヴィウスらから守ろうとした。だが結果として彼女らの命を救う事が出来ず、陰惨な心の闇となってジルベルトを苦しめ続けている。
出世のために兄を殺した冷酷な皇太子と呼ばれるのならそれでいい。
被害者らとその家族の尊厳を守るためならば、甘んじて悪人になろうと——。