【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
マリアの胸に一抹の想いがよぎる。
——ジルベルトは愚王の素質を見抜いていた。
思えばシャルロワのかつての王とて『愚王』そのものだったではないか。
マリアが知る王の姿は——色香に溺れ、政治的不作為によって国を疲弊させただけではない。
自己中心的な性格で貴族や領民を顧みず、高額な税金を徴収しては浪費や宮廷の贅沢に費やし、貧困層には手厳しい取り締まりを行った。貴族たちとの紛争を煽り、彼らを反乱に導いたりもした。
『シャルロワはいつか帝国に呑まれる。』
そう言った母の言葉を、かつてマリアは帝国の脅威だと捉えた。
だが今は全く別の意味合いだったとわかる。
母は悟っていたのだ……シャルロワの愚王の支配が長くは続かぬ事を。
「誰もあなたを責めないわ、ジルベルト……! 愚王は賢王によって滅ぼされる。いにしえから続くかつての王たちの世も、そうやって紡がれて来たのです……それは、シャルロワも同じ。
帝国の今の治世も、領民の子供たちの輝く笑顔も、あなたが紡いだものです。亡くなった女性たちはきっと心から感謝してる。恨んでいるはずなんかありません。私も同じ女性だから、彼女たちの気持ちが少しはわかるつもりです」
マリアの剣幕に驚いたジルベルトが目を見張る。