【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「うん、あぶなかった!! みつかるところだった」
「だがあんしんしろ。ここはおれたちのさくせん勝ちだ」
「え? さ、く、せん、って?」
「危なくなったら隠れるってのも《ゆうこう》なさくせんのひとつだろ?」
巨大な鉢植えの影に身をひそめていた皇子たちがおそるおそる顔を覗かせる。その様子を飾り棚の上から眺め見ているのは猫のジルだ。
「我らは今、じゅうだいなミッションをなしとげようとしている。見つかって勉強部屋につれもどされるわけにはいかないんだ」
「いかないんだ!!」
—— 何がミッションだ。早く捕まって大目玉をくらうがいい。
彼らから少し離れた場所にふわりと降り立つと、ジルは忍び足を始めた皇子たちを追うように音を立てずしなやかに歩く。
不快な想いをさせられたのだ。
皇子たちが誰かに見つかって叱られる有様を見届けてやろうと思った。
皇子たちは母君の寝室に向かっているらしい。
陽の光が差し込む広々とした明るい廊下の方々に置かれた鉢植えや飾り棚の後ろに隠れながら、ひどく周囲を気にして、警戒しながら。
少しずつ目的の場所に向かって距離を詰めて行く。