【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
ならば自分は何なのだろう。
心の中をふらふらと彷徨い続ける虚無感と疎外感は、そんな疑問から来るものに違いない。
そしてこの問いかけの答えは永遠に見つからないだろうと、ジルは思うのだった。
*
聡明で思慮深い帝国の皇后は扉の向こう側の喧騒に気がつくと、寝台に横たわった重い身体をゆっくりと起こす。
体調がすぐれないとは言え、皇帝陛下の御前で横になったままというわけにはいかない。
「リュシエンヌ、起きてる……?」
遠慮がちなノックの音とともに、探るような声が届いた。
彼女の予想は的中し、夫のジルベルトが今日何度目かの来訪をしたのだった。
明け方から昼過ぎに至るまで何人もの人間が出入りを繰り返していたが、皇后——リュシエンヌは夫の足音や重厚な衣服の衣擦れの音を他の者のそれと聞き違えたりはしない。
「ええ、起きております。お入りになって」
心の中をふらふらと彷徨い続ける虚無感と疎外感は、そんな疑問から来るものに違いない。
そしてこの問いかけの答えは永遠に見つからないだろうと、ジルは思うのだった。
*
聡明で思慮深い帝国の皇后は扉の向こう側の喧騒に気がつくと、寝台に横たわった重い身体をゆっくりと起こす。
体調がすぐれないとは言え、皇帝陛下の御前で横になったままというわけにはいかない。
「リュシエンヌ、起きてる……?」
遠慮がちなノックの音とともに、探るような声が届いた。
彼女の予想は的中し、夫のジルベルトが今日何度目かの来訪をしたのだった。
明け方から昼過ぎに至るまで何人もの人間が出入りを繰り返していたが、皇后——リュシエンヌは夫の足音や重厚な衣服の衣擦れの音を他の者のそれと聞き違えたりはしない。
「ええ、起きております。お入りになって」