【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「ああ〜〜〜っっ!!」
「エルヴィン、妹が寝ているのだ、静かにしなさい」

「ごめんなさい」
 父親の叱咤に素直に反省をし、弟の代わりに謝るのはいつもアルハイゼンのほう。

「見つけた……! 《《われらのお宝》》ぁぁっ」

 エルヴィンが跳ね上がる勢いで駆け寄って、母の腕に抱かれる玉のような姫君を覗き込む。
 腕の中にジルを伴ったアルハイゼン皇子もそれに続いた。

「本当だ、《《お宝》》だ……!」

「私たち家族に宝物が増えたわね。あなたたちは今日からお兄様よ」
「あっ、おメメとじたよ~」

「母上に似て美人だろう?」

 リュシエンヌの腕の中を覗く輪のなかにジルベルトが加わり、陽だまりのようにあたたかなひとつの輪となった。


 ジルは、心根をまばゆい閃光に貫かれたような衝撃に胸を躍らせていた。
 哀しい賭けの結末なんて、すっかり忘れてしまうほどに。


 ——赤ちゃんが生まれたんだね……!
 おめでとう、マリア。
 なんて可愛いんだろう……祝福の光に抱かれた天使みたいだ。


 同時に、無慈悲な灰色の雨雲がジルの青空に立ちこめる。


 ——このままずっと眺めていたいけれど、ボクは部外者だ。
 この輪の中にいちゃいけないんだ。
 だからもう……出ていかなくちゃ。


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