【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
店の従業員たちに気付かれないよう細心の注意を払いながら、時間の許す限りマリアは仔猫の寝床に通った。
仔猫の薄いブルーの瞳には正気が宿り、マリアが拾った時よりほんの少しだけ成長したのか、鳴き声もしっかりとしてきた。
「遅くなってごめんね! 夜ご飯を持ってきたわ」
いつものように寝床で丸まっていた毛玉が少しだけ動いて、仔猫がマリアをチラ見する。
「またそんな顔をするのね? 今日は白身のお魚を持って来たのよ?」
仔猫に食事を置いてから、じゃれ合って遊ぶ。そんな些細な事がマリアの大切な日課になっていた。
時折、雨季の冷たい小雨がマリアたちの頭上に降り注いだが、幸せな時間を過ごす《《ふたり》》にはお構い無しだった。
マリアが手を差し伸べて白い被毛を撫でれば、にゃー…とひと鳴きをして、媚びるようにマリアの手に頬を擦り寄せてくる。
「今さら謝ろうったって遅いんだから」
仔猫は普段つっけんどな態度を取る割には、時折甘えたような仕草を見せる。
マリアはそんな仔猫が愛らしく思えて仕方がない。
「実はねっ、あなたのアイスブルーの瞳も、仕草も……誰かさんにとてもよく似ているのよ?」