【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「みゃー…」
仔猫を膝の上に抱いてゆっくりと撫でながら、マリアは子猫の背中に揚々と話しかける。仔猫はよほど気持ちがいいのか、もっと撫でて……とでも言うようにころんとピンク色の腹を見せた。
「その人はあなたと同じで、とても高貴な身分を持つ人なの。プライドも高くて…… あ、これは私の想像だけれどっ。そしてね……凛々しくて、高潔さに溢れていて。なんて言うか、普通じゃないオーラを感じるの。あなたみたいにね、愛想無しに見えて本当はそうじゃないっていうか……。彼はきっと、甘え上手だとも思うのよ?」
そんな自分の発言につい頬が熱くなってしまう。
「私……。あなたとその人を、重ね合わせているのかも知れないわね」
——『ジルベルト』。
いつしかマリアは、仔猫をそう呼ぶようになっていた。
「元気になって良かった。ジルベルト、大好きよ……」
「みゃー」
仔猫は気持ちよさそうにマリアに身体中の力を委ねている。夜空一杯に広がった黒雲から、また小雨が降り始めた。
「雨が酷くならないうちに、もう横穴に戻りましょうねっ」
「みゃー、みゃー」
「いやいやしてもダメよ、爪を引っ込めて? あなたの綺麗な毛が濡れちゃうわ」
「みゃーみゃー、みゃーッ」