猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない

 フリードリヒの顔を見上げると、フリードリヒは顔を赤くして、アリアナを見たり目をそらしたりを繰り返している。
 その姿は、とても周囲が、そしてアリアナが思っていたような「素行の悪い婚約者を厭っている王太子」のものではなかった。

「あ、あの、フリードリヒ、さま?」
「……ああ、もう!どうしてアリアナはそんなに愛くるしいんだ……!この女生徒たちへの怒りより、君への愛でおかしくなってしまいそうになる……!」
「……え?」

 フリードリヒがたまらない、というようにアリアナの額にキスをする。
 それは、まさしく婚約者が愛しくてならない、という態度でしかなくて。
 ――この見世物に、周囲に人が集まってくる。
 周囲の人間が不可思議なものを見るように目を見張る、その瞬間。
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