猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
しかしそんなことはもはやアリアナには関係ない。
ぐるぐる回る頭で、震える口で、必死に「ばか」と繰り返すしかできないのだ。
「ふふ……アリアナはかわいい。本当にかわいいね……。本当は、人前にこんなにかわいいところを見せたくはなかったんだけれど」
「かわいくっ、ないですっ!」
「うーん、まったくもってかわいい」
かみしめるようにフリードリヒが言う。周囲の生徒たちがそれぞれに頷くのがわけがわからない。
アリアナは、しぼりだすような声で言った。
「だって、そんな、どうして……そう思っていたなら、言ってくださらないの」
「君が好きすぎて照れてしまったんだ。でも、このままではいけない、と思ってね」
フリードリヒの目がすう、と細められる。
アリアナは気づけば目から涙を流してしまっていて、しゃくりあげるような嗚咽を我慢することができなかった。