猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
「わたくしが、すき?」
「うん」
「わたくし、あきらめようとおもっていましたのに」
「――あきらめる?」
「ええ、だって、わたくし、素行不良で。目つきも悪くて」
「素行が悪いなんてことないし、愛しい君にそんなことを言う人間がいたら引きずり出して八つ裂きにしてあげる」

 フリードリヒがそのまなざしにひやりとしたものを混ぜて言った。
 周囲の温度が数度下がった気がするが、泣いているアリアナは必死すぎて気づいていない。
 ただひたすらに周囲の人間が王太子の愛の重さを垣間見て、ぞっと背筋を凍らせただけだ。

「ご冗談はいいですわ。……でも、そう、そうなんですのね」
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