猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
アリアナは、その子フクロウのような目にいっぱいの涙をためて、フリードリヒを見上げた。
「わたくし、あなた様を好きでいてよろしいんですの?」
「――好きでいてもらわないと、僕が困るよ」
「……わ、わたくしっ、フリードリヒ様が、すきですっ……すきなんですの……」
「うん――うん――……」
フリードリヒの、アリアナを抱きしめる手に力がこもる。
「……僕も、君を愛しているよ」
フリードリヒが、言って、アリアナの頤を片手でそうっと持ち上げる。
触れるだけの口づけをして、アリアナがぼうっと目を瞬いたとき、周囲から拍手が響いた。
そこでアリアナは、自分たち以外にひとがこんなに集まっていたことに気づいてようやっと驚いた。