猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
王太子フリードリヒ・ヴァン・アレンドロ
「――ぴ」
「ぴゃああああ!」
悲鳴があがる。小鳥のような悲鳴が。
それを愛し気に見つめながら、フリードリヒがもう一度、アリアナの唇をふさいだ。
あたたかな拍手がふたりを包み込む。
その幸福に酔いしれながら――自分の腕の中に、アリアナがいることに酔いしれながら、フリードリヒはうっそりとほほ笑んだ。
あの日――アリアナが自分をかばって倒れた日を覚えている。
刺客はすぐにつかまったが、アリアナの体には一生残る傷ができた。
最初は、かわいそうだな、と思っただけだった。