猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない

 恋をして、君を愛して――君のすべてを欲しいと思った。変わってしまった顔だって愛くるしいと思っているし、ミリナに嫉妬するアリアナはかわいらしかった。
 けれども、こんなにも愛しているのに彼女が自身から離れていこうとしているのを感じ取った瞬間、フリードリヒは自分が狂うかと思った。
 愛を伝えているつもりだった。けれど、そんなものでは足りなかったのだ。
 もっと、もっと――アリアナが、自分から離れていかないよう、愛さなくては、と思った。

 そうして、フリードリヒはミリナがアリアナへ好意を抱くように仕向けた。と言っても、アリアナのあまのじゃくな性質を教えれば、それは難しいことではなかった。
 ミリナが好いたのが自分の側近だったのも都合がよかった。

 その想いをそれとなく操作し、側近であるディオンへミリナを勧め、二人がなんの障害もなく結ばれるように力添えをした。
 それもこれも、アリアナがフリードリヒの想いを受け入れてくれるようにするため――フリードリヒから逃げ出さぬよう、外堀を埋めるためだった。
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