貴公子アドニスの結婚

ラントン家の花嫁

アドニスは、一年間の花嫁教育を終えたベルトラン子爵令嬢と結婚した。
王都の中心にある礼拝堂で挙げられた結婚式は、それはそれは壮麗なものであった。

王国一の美青年と称される花婿を一目見ようと、王都の民は我先にと礼拝堂に集まった。
しかし民が驚いたのは、そんなアドニスに見劣りしない花嫁である。
花嫁は光沢のある純白のドレスに身を包み、楚々として立っていた。
銀色に輝く髪はアドニスのそれにも負けず美しく、透き通るような白い肌が薄っすらと桃色になる様もなんとも可愛らしい。
初々しい微笑みをたたえ、それでも堂々とアドニスの横に立つ花嫁に、民は熱狂した。

アドニスもそんな花嫁を見下ろし、微笑みを浮かべる。
一年前まであんなに垢抜けなかった女が、驚くほど美しくなった。
きっと血の滲むような努力をしたのだろう。
全ては、この自分の隣に立つために。
彼女は、あんな条件を突きつけられても逃げなかったのだ。
それほど、アドニスのことが好きでたまらないということなのだろう。
そう思うと、アドニスの自尊心は満たされ、新妻に優しくしてやりたくなった。
今晩はいわゆる初夜である。
彼女の気持ちに応えるためにも、できる限り優しくしてやるのだ。

こうしてアドニスの三度目の婚約は、ようやく結婚まで行き着いたのである。
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