貴公子アドニスの結婚
「…何故私が貧乏貴族の行き遅れなんかと…」
アドニスはその日、超絶不機嫌なまま見合いの席に臨んだ。
今度の相手は田舎の領地から出たこともないような貧乏子爵家の娘だと言う。
なかなか身を固めないアドニスの相手として、父が血統だけを見て連れて来た見合い相手だ。
後継を成すために嫌悪感を抱かない程度の容姿なら仕方ないと思っていたが、貧相で田舎臭い女だろうと思うと気が滅入る。
とはいえ、社交界にも顔を出したことがないようだから、大人しく従順な女ではあろうが。
実はアドニスは、全くの女嫌いなわけではない。
この世に生を受けて二十四年、唯一自分より美しい女性を知っていた。
それが、少し年上の従姉にあたる公爵令嬢フィリアだ。
自分と面立ちが似たその少女を、兄弟のいないアドニスは実の姉のように慕っていた。
彼女に対する気持ちが単なる親愛の情なのか淡い初恋なのかはわからないが、年頃になったアドニスは生涯フィリアを守っていきたいと剣を捧げた。
フィリアは生まれてすぐからこの国の第一王子の婚約者になっていたため、結婚して王太子妃になった彼女の、護衛騎士となったのだ。
見合いは、王都にあるラントン公爵邸で行われた。
このために、ベルトラン子爵令嬢は何日もかけて領地から出て来たらしい。
王都ではベルトラン家の所有する邸宅に滞在するらしいが、それも王都の外れにある、裕福でもない商家よりもさらに小さな家であった。
アドニスはその日、超絶不機嫌なまま見合いの席に臨んだ。
今度の相手は田舎の領地から出たこともないような貧乏子爵家の娘だと言う。
なかなか身を固めないアドニスの相手として、父が血統だけを見て連れて来た見合い相手だ。
後継を成すために嫌悪感を抱かない程度の容姿なら仕方ないと思っていたが、貧相で田舎臭い女だろうと思うと気が滅入る。
とはいえ、社交界にも顔を出したことがないようだから、大人しく従順な女ではあろうが。
実はアドニスは、全くの女嫌いなわけではない。
この世に生を受けて二十四年、唯一自分より美しい女性を知っていた。
それが、少し年上の従姉にあたる公爵令嬢フィリアだ。
自分と面立ちが似たその少女を、兄弟のいないアドニスは実の姉のように慕っていた。
彼女に対する気持ちが単なる親愛の情なのか淡い初恋なのかはわからないが、年頃になったアドニスは生涯フィリアを守っていきたいと剣を捧げた。
フィリアは生まれてすぐからこの国の第一王子の婚約者になっていたため、結婚して王太子妃になった彼女の、護衛騎士となったのだ。
見合いは、王都にあるラントン公爵邸で行われた。
このために、ベルトラン子爵令嬢は何日もかけて領地から出て来たらしい。
王都ではベルトラン家の所有する邸宅に滞在するらしいが、それも王都の外れにある、裕福でもない商家よりもさらに小さな家であった。