貴公子アドニスの結婚
「私の方は…」
そう言うとアドニスはいつもの見合いのように最低条件を口にした。
まず、愛は求めないこと。
公爵家の家政に口をはさまないこと。
そして男子を生むこと。
その三つさえ守ってくれれば好きにしていていいし、金はいくらでもあるから湯水のように使ってくれてもいい。

ベルトラン子爵令嬢は
「条件はそれだけですか?」
と真っ直ぐにアドニスを見つめた。
(おや?)とアドニスは眉を上げる。
大抵の令嬢はこの辺で怒り出すからだ。
「そうだな、最低限の社交をしてくれればそれでいい。あとは公爵家の名を汚すようなことをしなければ、好きにしてくれていいさ」

時間を置かず、ベルトラン子爵家から承諾の返事が来た。
あのような条件をのんでも、ラントン公爵家と繋がりたかったということなのだろう。

こうしてアドニスは、三度目の婚約を結ぶことになった。
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