貴公子アドニスの結婚
王太子妃のお茶会は、王宮の庭のガゼボで催された。
美しい花に囲まれたガゼボの中に、これまた花より美しい貴婦人たち。
その中でも淡いクリーム色のドレスを着たベルトラン子爵令嬢は匂い立つように初々しく、可愛らしい。
当然のように王太子妃の護衛としてガゼボの側に立っているアドニスは、そんな婚約者に思わず見入った。
「ベルトラン子爵令嬢は、花嫁教育の時間以外は何をなさっているの?何かご趣味はあるのかしら」
彼女がフィリアにたずねられているのを目にして、アドニスはつい聞き耳を立てた。
そう言えば、彼女の趣味など聞いたこともなかった。
「私は本が好きで、暇さえあれば読書をしておりますの。また、本を修理するのも好きですのよ」
ベルトラン子爵令嬢が恥ずかしそうにそう答える。
「まぁ、修理ですって?貴女が?」
そう反応したのはフィリアではなく、招かれていた伯爵夫人だ。
「ええ。古く傷んだ本でも、綴り直したり、貼り直したりすればまた読めますもの」
本好きなベルトラン子爵令嬢ではあるが、本は高価な物であり、貧しいベルトラン子爵家では新しい本を買う余裕などなかった。
だから、彼女は友人から捨てるような古本を譲り受け、自分で修理しながら読んでいたのだ。
「まぁ、奇特なご趣味ですこと。でも、もうすぐラントン公爵夫人になる貴女に、もうそんな技術は必要ないでしょう?古い物は捨てて、新しく買っていただけばいいのだから」
嘲笑うように扇子を口に当てながらそう言ったのは、やはり茶会に参加している侯爵令嬢だ。
しかし彼女はきょとんと首を傾げ、侯爵令嬢を見た。
「いいえ、公爵家に必要な物ならともかく、私の趣味の物を公爵家に買っていただくことはありませんわ。それに、古い文献には大層貴重な物もあるのです。恐れながら、王宮の図書館にもそういった古く貴重な文献がたくさんおありでしょう?」
「そうね、貴女の言うとおりだわ。素敵なご趣味ね」
フィリアは微笑んでベルトラン子爵令嬢を誉め、伯爵夫人と侯爵令嬢は唇を噛んだ。
ベルトラン子爵令嬢を気に入った王太子妃フィリアは、その日からちょくちょく彼女を誘うようになった。
本好きな彼女のために、王宮図書館も出入り出来るようにしてやった。
そして、アドニスに言うのだ。
「後悔する前に、彼女にしっかり目を向けなさい」と。
美しい花に囲まれたガゼボの中に、これまた花より美しい貴婦人たち。
その中でも淡いクリーム色のドレスを着たベルトラン子爵令嬢は匂い立つように初々しく、可愛らしい。
当然のように王太子妃の護衛としてガゼボの側に立っているアドニスは、そんな婚約者に思わず見入った。
「ベルトラン子爵令嬢は、花嫁教育の時間以外は何をなさっているの?何かご趣味はあるのかしら」
彼女がフィリアにたずねられているのを目にして、アドニスはつい聞き耳を立てた。
そう言えば、彼女の趣味など聞いたこともなかった。
「私は本が好きで、暇さえあれば読書をしておりますの。また、本を修理するのも好きですのよ」
ベルトラン子爵令嬢が恥ずかしそうにそう答える。
「まぁ、修理ですって?貴女が?」
そう反応したのはフィリアではなく、招かれていた伯爵夫人だ。
「ええ。古く傷んだ本でも、綴り直したり、貼り直したりすればまた読めますもの」
本好きなベルトラン子爵令嬢ではあるが、本は高価な物であり、貧しいベルトラン子爵家では新しい本を買う余裕などなかった。
だから、彼女は友人から捨てるような古本を譲り受け、自分で修理しながら読んでいたのだ。
「まぁ、奇特なご趣味ですこと。でも、もうすぐラントン公爵夫人になる貴女に、もうそんな技術は必要ないでしょう?古い物は捨てて、新しく買っていただけばいいのだから」
嘲笑うように扇子を口に当てながらそう言ったのは、やはり茶会に参加している侯爵令嬢だ。
しかし彼女はきょとんと首を傾げ、侯爵令嬢を見た。
「いいえ、公爵家に必要な物ならともかく、私の趣味の物を公爵家に買っていただくことはありませんわ。それに、古い文献には大層貴重な物もあるのです。恐れながら、王宮の図書館にもそういった古く貴重な文献がたくさんおありでしょう?」
「そうね、貴女の言うとおりだわ。素敵なご趣味ね」
フィリアは微笑んでベルトラン子爵令嬢を誉め、伯爵夫人と侯爵令嬢は唇を噛んだ。
ベルトラン子爵令嬢を気に入った王太子妃フィリアは、その日からちょくちょく彼女を誘うようになった。
本好きな彼女のために、王宮図書館も出入り出来るようにしてやった。
そして、アドニスに言うのだ。
「後悔する前に、彼女にしっかり目を向けなさい」と。