花婿が差し替えられました
ルイーズだって、クロードがアリスと離縁したからと言って、自分と再婚出来るとは考えていない。
クロードは爵位も持たないただの騎士で、王女である自分と結婚するには身分が低すぎるからだ。
それでもずっと二人が一緒にいるためには、やはりクロードとアリスを離縁させ、護衛騎士として隣国に連れて行くのが一番良いのだ。
公にできない秘密の恋なんて、なんて素敵な響きだろうか。

もちろん離縁せずに連れても行けるが、離縁しておいた方が、後顧の憂いも無いというものだろう。
そのためには、二人が離縁するきっかけが欲しい。
本当はクロードとルイーズが恋愛関係にあると噂になり、アリスとの仲に亀裂が走ればいいとも考えたが、クロードに醜聞があればルイーズの護衛騎士を外される可能性もある。
それでは本末転倒だ。
それなら…。
「アリス、貴女に醜聞があればいいんだわ」

醜聞とは言っても、アリスにはすでに花婿を差し替えて結婚した女という醜聞がある。
あの女には、そんなことは醜聞にさえならないのだ。
ならば、それ以上の、本当の醜聞を作ってやらなければならない。

「ナルシスとレイモン…、どちらにしようかしら」
ルイーズはそう呟いた。
どちらかを使って、アリスが離縁せざるを得ない状況を作るのだ。
または、二人ともを使って。

ルイーズは、アリスとクロードがすでに離縁に向かって歩んでいることなど知らない。
とにかくお気に入りのクロードとずっと一緒にいるための策を、ひたすら考えているのであった。

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