花婿が差し替えられました
「うーん…」
ナルシスが眩しそうに薄っすらと目を開けた。
アリスは花瓶を振り上げたまま、呆然と彼を見ている。
「……アリス?」
ナルシスはぼんやりとアリスを見つめていたが、やがて花瓶を振り翳しているアリスに気づいて、驚愕に目を見開いた。

「ア、アリス…!なんだかわからないけどその凶器おろして!」
ナルシスはベッドから降りないまま後ずさった。
「ナルシス、正直に答えて。何故貴方はここにいるの?」

アリスは瞬時に頭を巡らせた。
誰が画策したのかは知らないが、ナルシスとアリスに危害を加えるでもなくこうして一室に閉じ込めたのは、二人の醜聞を狙ってのことであろう。
未だナルシスがアリスに執着しているのを知っている誰かが、二人を陥れようとしているのだ。
ここで、ナルシスに襲われたら…。
いや、例え何もなかったとしても、男女が二人きりで一室に閉じ込もっていたら、貴族社会ではそれだけで十分醜聞になる。
それに…。
もしそのことをクロードが聞いたら、彼はどう思うだろう。
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