花婿が差し替えられました
「そのままでいいから聞いてください、アリス」
クロードがあやすような柔らかな声で囁いた。
「……なあに?」
「俺はずっと、あの初夜の晩に貴女に酷いことを言ったと後悔していました。傷つけたと…、ずっと謝りたいと思っていたのに、とうとう一年も経ってしまって…」
「そんなこと…。私だって酷い態度をとっていたから、お互い様だわ」
アリスはあの晩のことを思い出すと顔から火が出そうだ。
よくも、経験も無い自分があんな恥ずかしい誘い文句を吐いたものだと。
今ならわかる。
本当に好きな相手なら、あんな台詞は絶対に言えないと思う。

「だったら…、俺たち、やり直せますか?」
「……え……?」
アリスはクロードの胸から顔を上げた。
きょとんと、丸い目で彼を見上げる。

「これは、護衛騎士を解任されたからじゃない。その前からずっと考えていたんです。俺が本当に守りたいのは、いや、守るべき人は、王女様じゃなくて、アリス、貴女だって」
「それは…、どういう…」
「俺は近衛を辞めようと思います。俺は貴女を守りたい。貴女の護衛騎士になりたいんだ」
「…へ…?」
アリスは絶句したままクロードを見つめた。
だって騎士の仕事は、彼の夢だったはずなのに。
< 143 / 156 >

この作品をシェア

pagetop