花婿が差し替えられました
実は二人は、一年以上前に王都で結婚式を挙げているため、今回は二回目の結婚式である。
一度目とは違って身内だけのささやかな式だが、主役の二人はとても幸せそうだ。
一度目の結婚式では誓いの口づけもなく目を合わせることさえしなかった二人が、終始見つめ合い、微笑み合う姿は、列席者たちをも幸せな気分にさせてくれる。

今回こうして二度目の結婚式を挙げることになったのは、夫クロードの発案である。
クロードは終始妻の顔も見ず仏頂面で通した一度目の結婚式を反省し、気持ちが通じ合った今、本物の結婚式を挙げたいと提案したのだ。
同じようなことを考えていた妻アリスもまた、すぐに賛成したことは言うまでもない。

だから今回、二人は遅い新婚旅行を兼ねながら領地に赴く計画を立て、こうして旅行の最後に身内だけの結婚式も行うことにした。
出発は、正に王都とサンフォース伯爵領を結ぶ鉄道が全面開通したその日。
その日夫婦で開通セレモニーに列席した二人は、そのまま最初の汽車に乗り込み、新婚旅行と洒落込んだのだ。
つまりこれは鉄道の宣伝であり、また、結婚式は領民たちに対して新領主夫妻のお披露目の意味もこめている。

また、この新婚旅行の費用だが、実は全て王室から出ている。
三ヶ月程前に起きたアリス監禁事件がルイーズ王女によるものだったため、王室からがっぽり賠償金をもらったのだ。

それから、御前試合で準優勝したクロードだったが、あの後、優勝したミハエルと同等の報奨金が出ている。
試合後にクロードの怪我が発覚し、それがあの例の事件で負ったものだと判明したため、賠償金を兼ねたというわけである。
決して、やり手の妻アリスが脅し取ったわけではない。
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