花婿が差し替えられました
ーーガタンッ‼︎ギギギーッ‼︎ーー
突然馬車が大きく揺れた。
「キャッ!」
軽いアリスの体が前方に吹き飛ばされそうになる。
しかし衝撃を予感して目をギュッと瞑った次の瞬間、アリスは何かあたたかいものに包まれているのを感じた。

(…何…⁈)
「…大丈夫ですか?」
頭の上から声がして顔を上げると、触れそうな位置にクロードの顔がある。
「だ…、旦那様…?」
クロードはアリスを抱きしめたまま、外に向かって声を上げた。
「どうした⁈事故か⁈」
「申し訳ありません!」
馬車の前から、御者が叫んだ。
「突然何かが飛び出してきたので、急停車いたしました」
「まさか、人か?」
「いいえ、何か動物のようです」
「…動物…?」
クロードの腕が緩んだ隙に、アリスはサッと離れた。
「旦那様、ありがとうございました。おかげで助かりました」
「いや…」
「旦那様にお怪我はありませんか?」
「はい、私は大丈夫です」
日頃から鍛えているクロードにとって、これくらいのことはなんでもない。
ただ、離れていった温もりが少し寂しい気がして、そんな自分に戸惑っていた。
抱きしめたアリスの肩は、思っていたよりずっと華奢だった。
結婚披露パーティでダンスをした時は感じもしなかったのに。
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