花婿が差し替えられました
求婚者は皆アリスのお眼鏡に叶おうと優しく親切だ。
そして求婚者の中でとりわけ熱心だったのが、領地が隣り合わせであるコラール侯爵家の、次男ナルシスであった。
サンフォース伯爵家は王都に出る時コラール侯爵領を通らねばならず、コラール侯爵家は貿易のためサンフォース伯爵領の港を使う。
隣り合わせた家門は言わばウィンウィンの関係だ。
それに古くから続くコラール侯爵家は王妃を輩出したこともある名門で、王室や高位貴族との良いパイプ役を果たしてくれるだろう。
裕福だが商人貴族と揶揄されることもあるサンフォース伯爵家にとってはなかなか良い縁談相手だ。

そうして時を置かず婚約を発表したアリスとナルシスであるが、二人の婚約のニュースは社交界に衝撃を与えた。
ナルシスは社交界きってのプレイボーイ…女ったらしと有名だからだ。
社交界の花から花へと移り行くナルシスは陰で『ミツバチ』と揶揄されている。
そんな噂を知らぬはずがなかっただろうに、超優良物件の令嬢が選んだのは社交界一の尻軽男なのだ。
「顔か…?やっぱり顔なのか?アリス嬢ともあろう方が、やっぱり選ぶのは顔なのか?」
「所詮アリス嬢と言えど、男を顔で見る普通の女なのだ」
衝撃を受けた求婚者たちは、皆腹立ち紛れにアリスを罵ったという。
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