花婿が差し替えられました
アリスはようやく彼が何故こんなに取り乱しているのか理解した。
クロードはアリスがサンフォース領から王都に向かう途中で襲われたことを知っているのだ。
「落ち着いてくださいませ旦那様。私はこの通り、ピンピンしておりますわ」
「…本当に?」
「ええ。傷一つありませんわ」
「…良かった…」
クロードはあらためてアリスを抱きしめた。
今度の抱擁はふわりと柔らかく、アリスを労るような抱きしめ方だ。
「旦那様ったら…」

騎士姿のクロードは薄汚れ、土埃の匂いがした。
長旅の帰還から間髪入れず、休憩する間も身なりを整える間も無くこちらに向かったのだろう。
それほど、アリスの無事を確かめたかったのかと思うと、アリスの胸に温かいものが広がった。

「ところで旦那様…、何故襲われたことを知ってらっしゃるの?まさか、ラウルが?」
ようやく落ち着いて自室で身なりを整えてきたクロードに、アリスはお茶を振る舞いながらそうたずねた。
クロードは少しバツが悪そうに目を伏せると、
「ラウルは叱らないでください。俺が彼を問いただしたんです」
と言った。
ラウルはアリスに口止めされていたにも関わらず、クロードに襲撃のことを話してくれた。
今までの何も知らないクロードを見ていて、さぞかし歯痒く思っていたからなのであろう。
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