花婿が差し替えられました
「…あの時も、護衛が潜んでいたのですね」
クロードがポツリと呟いた。
「あの時…?」
「夜会の時や、オペラに行った日も。貴女には精鋭が付いているとラウルから聞きました」
「あ…」
今度はアリスの方がバツが悪そうな顔をした。
夜会やオペラデートの日は、影と呼ぶ護衛を潜ませていた。
いくらクロードが優秀な騎士でも見破れない程の精鋭たちだ。
しかし、騎士が本業であるクロードと行動を共にしながらさらに護衛を付けていたなんて、もしかしたら彼のプライドを酷く傷つけたかもしれないと思ったのだ。

「ごめんなさい旦那様。貴方の実力を疑っていたわけではないんです。ただこれは、サンフォース家の宿命であるというか…」
「いいえ、確かにあの日俺は浮かれていて気付きもしなかった。でも、そんなことはどうでもいいのです」
クロードはピシャリと言い切った。
自分の騎士としてのプライドとか、そんなことは本当にどうでも良かった。
「俺は夫なのに、貴女が危険な目に遭っていることさえ知らなかった。それが、本当に悔しい。どうかこれからは、包み隠さず話して欲しい」
「え、ええ…」
アリスが頷くと、クロードはホッとしたように微笑んで見せた。
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