黒瀬くんは、"あの"一匹オオカミちゃんを一途に溺愛したいらしい。
01:となりの席のアイツは変人
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「うわ、見てよ。ウチらのクラスに"一匹オオカミ"がいるんだけど」
「マジじゃん、最悪。クラスの顔面偏差値、一気に下がるわぁ」
「てか、何あのボサボサ頭。あれでお団子ヘアのつもり?」
「自分ではちゃんとアレンジしてるつもりだったりしてぇ」
あぁ、うるさい。
朝からどいつもこいつも、本当にうるさい。
陰口とは思えないほど大きな声で、堂々と人を指さしながら笑い飛ばすなんて正気の沙汰じゃない。
いつもなら思いきり足を踏んづけてやるか、鞄を投げつけてやるところだけれど、今日の私は生憎それどころではなかった。
私は今、盛大にお腹が痛い。痛くて痛くてたまらない。
毎月必ずやってくる、月イチの厄介極まりないアレのせいで、メイクバッチリな二人組の女をギロリと睨みつけることくらいしかできないくらいに、お腹が痛くて仕方ない。
今日から進級して、晴れて高校二年になったわけだけれど。
一番最初のクラス替えというイベントが大嫌いだ。