黒瀬くんは、"あの"一匹オオカミちゃんを一途に溺愛したいらしい。
勝手に決められた二年A組の教室へ入り、黒板に張り出されている席順を見て、ようやく自分の席となる机に辿り着く。
乱雑にカバンを置いて、一目散に顔を突っ伏して再び痛みと戦う。
あぁ、今日は本当にツイていない。厄日だ、厄日。
ただ、『大竹千代子』という名前が功を成して、窓際の一番うしろの席になれたことだけは喜ばしいことだ。
本来なら左右どちらにも他人が座るべきはずのところを、端っこの席というのは片方にしか人が座らない。
あとはとなりに座るヤツが、どうか、ギャーギャーうるさいヤツじゃありませんように。
そう願いながら、ギュッと目を瞑って再び襲ってくる鈍痛に耐えた。
「──ねぇ、どうした?体調悪い?」