一人ぼっちの魔女は三日月の夜に運命の騎士と出逢う
18.食事会2
店員が器用に腕に皿を乗せ、4枚の皿を運んできた。
ホカホカと湯気が上がるスパゲッティ。ルナがアリーと食べたフレッシュなトマトの物もある。
他三種類は初めましてな物。白色のクリームがかかった物や、野菜たっぷりの緑色のソースの物、そして挽肉たっぷり、卵が乗った食欲そそる物まで。
どれも美味しそうで、ルナの喉がごくりと鳴る。
「エルヴィンから、ルナちゃんがここの店が好きそうだと聞いてな」
「皆でシェアすれば色んな味を食べられるでしょ? 私がオススメをピックアップしといたわ」
エルヴィンの方を見れば、彼はゴホン、と咳払いをして言った。
「君、この店の話をした時、目を輝かせていただろう。だからお礼になると思って……」
確かにルナは目を輝かせた。そしてエルヴィンはその表情を見逃してはくれなかった。強引に今日という日取りを決めてしまったのはそこに原因があるのはわかっている。
ただ、改めて、自分の些細な機微を気付かれたのが恥ずかしくて、くすぐったい。
そして、実際にこうして憧れだったスパゲッティが目の前に広がり、皆が自分のためにしてくれたのだと実感出来て、嬉しい。
「ありがとう……ございます」
「なぜ泣くんだ?!」
「あれ?」
焦って立ち上がったエルヴィンに、ルナは自分が涙を流していることに気付いた。
もちろん、クロエがルナの憧れを知っていて、手配してくれたこともルナにはわかっていた。
憧れのスパゲッティだからだけではない。皆の温かい気持ちが嬉しい。
「そんなに好きだったのか?」
エルヴィンがハンカチをルナの前に差し出してくれた。
「はい……。師匠との想い出の味でもあるんです」
ハンカチを受け取り、涙を拭う。エルヴィンは「そうか」とだけ言って、ルナの肩に手を置いた。
大きなゴツゴツとした手が温かい。先程エスコートしてくれた手は、ルナの手をすっぽりと覆っていた。今も肩を優しく包んでくれている。
(男の人、なんだな)
漠然とした思いが胸の中でぽつりと溢れる。
「こいつさあ、誤解されやすいけど、ルナちゃんなら安心だな」
ハンカチで涙を拭い終えると、向かいのシモンがにっかりと笑った。
「え?」
「ちょっと隊長!」
ルナとエルヴィンがそれぞれにシモンを見つめると、彼は優しい瞳をしていた。
「こいつのこと、よろしくね?」
「はい!」
シモンの言葉に、ルナは躊躇なく答えた。
ルナの肩を包んでくれていた大きな手から、じわりと熱が伝わった気がした。
「これからもよろしくね」
「こちらこそ……」
ルナがエルヴィンに笑顔を向ければ、彼も目を細めて答えた。
「じゃあ、今度こそいただきましょうか!」
クロエの合図で、下がっていた店員が頷いて、皿を運んでくる。
そして店員が均等に4種類を皿に取り分けてくれ、ルナの目の前に並ぶ。
「召し上がれ」
「いただきます!」
クロエの合図に、ルナはフォークでパスタを絡め取り、口に運ぶ。
念願のスパゲッティだ。まずはアリーとの思い出のトマトの味から。
「……! おい、しぃ〜!!」
「そうか、それは良かった」
天を仰ぐようにルナが感動を表せば、シモンはがははと笑った。
ルナは4種類の味を夢中になって食べた。どれも美味しくて、夢のようだった。
「ルナ」
隣のエルヴィンが苦笑して呼びかけるので、何だろう、とルナが彼の方を見れば、ナプキンを手にしていた。
「ついてる」
「?!」
至近距離でエルヴィンに口元を拭われ、ルナは飛び上がった。
「あらあら」
「おいおい」
向かいのシモンとクロエもその光景に驚いて、スパゲッティを食べる手が止まる。
至近距離のエルヴィンと、向かいの夫婦からの視線にルナは耐えきれずに、顔が熱い。
「あ……の」
「ほら、取れた」
真っ赤で震えるルナに対して、エルヴィンの表情は変わらない。
「ありがとうございます?」
しどろもどろにルナがお礼を言えば、エルヴィンはふっと表情を緩める。
「いや。友人、だからな」
(ま、眩しい……!! この人、どんだけ友達いないのよ!)
人のことを言えた義理ではないが、ルナは思わず心の中で突っ込みを入れた。
「友達はそんな甘い空気で口元拭わないけどねえ」
向かいのクロエが何か言っているが、二人には聞こえない。
「ほら、もっと食え」
「は、はひ……」
エルヴィンの笑顔眩しいままに、スパゲッティをすすめられ、ルナはまた食べ始める。
さっきは夢中で気付かなかったが、隣からの視線が熱い。
どうやらルナが食べているところをエルヴィンが見守っていたようだ。
(え、見られてた……?! だから口元のソースにも気気付いて?! は、恥ずかしすぎる……!)
真っ赤になってエルヴィンを睨めば、彼は優しい瞳でルナを見つめていた。
「うまいか?」
「はい……」
そんな顔をされては文句も言えない。ルナは真っ赤になりながらもスパゲッティを食べ続けた。
「うーん、これは……」
「まあ、見守りましょう」
向かいのシモンが何やら唸り、クロエはふふふ、と笑みを零した。もちろん二人には聞こえていなかったのだが。
ホカホカと湯気が上がるスパゲッティ。ルナがアリーと食べたフレッシュなトマトの物もある。
他三種類は初めましてな物。白色のクリームがかかった物や、野菜たっぷりの緑色のソースの物、そして挽肉たっぷり、卵が乗った食欲そそる物まで。
どれも美味しそうで、ルナの喉がごくりと鳴る。
「エルヴィンから、ルナちゃんがここの店が好きそうだと聞いてな」
「皆でシェアすれば色んな味を食べられるでしょ? 私がオススメをピックアップしといたわ」
エルヴィンの方を見れば、彼はゴホン、と咳払いをして言った。
「君、この店の話をした時、目を輝かせていただろう。だからお礼になると思って……」
確かにルナは目を輝かせた。そしてエルヴィンはその表情を見逃してはくれなかった。強引に今日という日取りを決めてしまったのはそこに原因があるのはわかっている。
ただ、改めて、自分の些細な機微を気付かれたのが恥ずかしくて、くすぐったい。
そして、実際にこうして憧れだったスパゲッティが目の前に広がり、皆が自分のためにしてくれたのだと実感出来て、嬉しい。
「ありがとう……ございます」
「なぜ泣くんだ?!」
「あれ?」
焦って立ち上がったエルヴィンに、ルナは自分が涙を流していることに気付いた。
もちろん、クロエがルナの憧れを知っていて、手配してくれたこともルナにはわかっていた。
憧れのスパゲッティだからだけではない。皆の温かい気持ちが嬉しい。
「そんなに好きだったのか?」
エルヴィンがハンカチをルナの前に差し出してくれた。
「はい……。師匠との想い出の味でもあるんです」
ハンカチを受け取り、涙を拭う。エルヴィンは「そうか」とだけ言って、ルナの肩に手を置いた。
大きなゴツゴツとした手が温かい。先程エスコートしてくれた手は、ルナの手をすっぽりと覆っていた。今も肩を優しく包んでくれている。
(男の人、なんだな)
漠然とした思いが胸の中でぽつりと溢れる。
「こいつさあ、誤解されやすいけど、ルナちゃんなら安心だな」
ハンカチで涙を拭い終えると、向かいのシモンがにっかりと笑った。
「え?」
「ちょっと隊長!」
ルナとエルヴィンがそれぞれにシモンを見つめると、彼は優しい瞳をしていた。
「こいつのこと、よろしくね?」
「はい!」
シモンの言葉に、ルナは躊躇なく答えた。
ルナの肩を包んでくれていた大きな手から、じわりと熱が伝わった気がした。
「これからもよろしくね」
「こちらこそ……」
ルナがエルヴィンに笑顔を向ければ、彼も目を細めて答えた。
「じゃあ、今度こそいただきましょうか!」
クロエの合図で、下がっていた店員が頷いて、皿を運んでくる。
そして店員が均等に4種類を皿に取り分けてくれ、ルナの目の前に並ぶ。
「召し上がれ」
「いただきます!」
クロエの合図に、ルナはフォークでパスタを絡め取り、口に運ぶ。
念願のスパゲッティだ。まずはアリーとの思い出のトマトの味から。
「……! おい、しぃ〜!!」
「そうか、それは良かった」
天を仰ぐようにルナが感動を表せば、シモンはがははと笑った。
ルナは4種類の味を夢中になって食べた。どれも美味しくて、夢のようだった。
「ルナ」
隣のエルヴィンが苦笑して呼びかけるので、何だろう、とルナが彼の方を見れば、ナプキンを手にしていた。
「ついてる」
「?!」
至近距離でエルヴィンに口元を拭われ、ルナは飛び上がった。
「あらあら」
「おいおい」
向かいのシモンとクロエもその光景に驚いて、スパゲッティを食べる手が止まる。
至近距離のエルヴィンと、向かいの夫婦からの視線にルナは耐えきれずに、顔が熱い。
「あ……の」
「ほら、取れた」
真っ赤で震えるルナに対して、エルヴィンの表情は変わらない。
「ありがとうございます?」
しどろもどろにルナがお礼を言えば、エルヴィンはふっと表情を緩める。
「いや。友人、だからな」
(ま、眩しい……!! この人、どんだけ友達いないのよ!)
人のことを言えた義理ではないが、ルナは思わず心の中で突っ込みを入れた。
「友達はそんな甘い空気で口元拭わないけどねえ」
向かいのクロエが何か言っているが、二人には聞こえない。
「ほら、もっと食え」
「は、はひ……」
エルヴィンの笑顔眩しいままに、スパゲッティをすすめられ、ルナはまた食べ始める。
さっきは夢中で気付かなかったが、隣からの視線が熱い。
どうやらルナが食べているところをエルヴィンが見守っていたようだ。
(え、見られてた……?! だから口元のソースにも気気付いて?! は、恥ずかしすぎる……!)
真っ赤になってエルヴィンを睨めば、彼は優しい瞳でルナを見つめていた。
「うまいか?」
「はい……」
そんな顔をされては文句も言えない。ルナは真っ赤になりながらもスパゲッティを食べ続けた。
「うーん、これは……」
「まあ、見守りましょう」
向かいのシモンが何やら唸り、クロエはふふふ、と笑みを零した。もちろん二人には聞こえていなかったのだが。