一人ぼっちの魔女は三日月の夜に運命の騎士と出逢う
23.警備隊との和解
「何? お前の婚約者? 自分の色なんて着せて、流石お貴族様はやることが違うねえ」
エルヴィンの後ろに隠れていたルナを一人の警備隊員がすぐに見つけて、覗き込む。
「顔隠しちゃって、俺たちが怖いの? この国を守ってるのは俺たちだよー?」
「ミュラーの婚約者ってことは、この子も貴族のお嬢さん?」
もう一人の警備隊員もルナに近付き、からかい気味に話す。
エルヴィンは片手でルナを守るように隠した。
「……彼女は大切な友人だ。言いたいことがあるなら俺に言えばいい。彼女を巻き込まないで欲しい」
彼らよりも背の高いエルヴィンの圧に、警備隊員たちが一瞬たじろぐ。
「何だよ! 隊長に気に入られてるからっていい気になるなよ! お前なんか好き勝手やりやがって!」
「貴族だか何だか知らねーけど、この警備隊では身分なんて関係無いんだからな!」
次々に警備隊員たちがエルヴィンを罵る。しかしエルヴィンは、無表情のまま、ただ聞いていた。そのエルヴィンの態度にカッとなった隊員の一人が叫んだ。
「お前! 王女を怒らせて近衛隊をクビになったんだろ! どうせ近衛隊でもそんな態度だったんだろうな! 警備隊なんかに来てやる気ないんだろうが、お前みたいなのがいると迷惑なんだよ!」
「それは違う!!」
警備隊員の言葉に、思わずルナは前に出ていた。
「……ルナ?」
隣でエルヴィンが目を丸くしている。ルナは構わずに続けた。
「エルヴィンさんが近衛隊をクビになったのは、王女を庇って怪我した仲間の近衛隊員がクビにされそうになったことに抗議したからよ!」
皆、ルナの勢いに呆然としている。
「それに、この隊の人が危ない時に薬を探して回ったのもエルヴィンさんよ!!」
「え……」
ルナの言葉に警備隊員たちが顔を見合わせる。
「しかもエルヴィンさんは、仕事の時間以外に魔物討伐の見回りをした上に、夜間の見回り仕事だってしてるんだから!! 警備隊の仕事がどうでも良いと思ってるわけないじゃない!!」
「ルナ……」
一気にまくしたてて、息切れがする。はーはーと肩で息をするルナに、エルヴィンは目を瞬きながらも「ありがとう」と肩に手を置いた。
「俺の……命を救ってくれたのはミュラーさんだったんですね」
五人組の後ろの方にいた年若い隊員が呟きながら前に出る。
「あのとき、隊のために薬を探し回ってくれた人がいたって聞いてました! 命を救っていただいてありがとうございました!!」
その年若い隊員はエルヴィンの前に出ると、勢いよく頭を下げた。
他の四人も戸惑いながら見ている。
「いや。仲間の命が救えて良かった」
「……仲間……」
エルヴィンの言葉に年若い隊員が目を瞬きながら顔を上げる。
「近衛隊も警備隊も関係無い。特に警備隊は確かにこの国を守る要だ。国を守る仲間を助けるのは当たり前だ」
エルヴィンの言葉に年若い隊員の瞳がキラキラしているようにルナには見えた。
「そういや、ミュラーが深夜の警備をすすんで受けてくれてるって隊長が言ってたな……」
一人の隊員がボソッと呟く。
エルヴィンに一番食ってかかっていた隊員が、頭をガシガシとかきながらエルヴィンを見た。
「あ――、俺たち、近衛隊から来たってだけで、お前のこと勘違いしてたみたいだ。すまなかった」
「いや……」
「でも、お前も否定したり説明したりしないのが悪いんだぞ!」
謝罪した次の瞬間には、ビシッとエルヴィンも悪いと隊員が言う。
「ああ、すまない……」
「お前、そんな素直なのな」
素直に言葉を聞き入れるエルヴィンに、隊員も目を丸くし、エルヴィンを凝視して、笑った。
「俺はニコラってんだ。改めてよろしくな、ミュラー」
その隊員はエルヴィンに手を差し出す。
「よろしくニコラ。俺もエルヴィンで良い」
その手をエルヴィンが取ると、わっと他の四人から歓声があがった。
「何だよ、もっと早く話せば良かったな」
「悪かったな」
「隊のためにありがとな。これからも一緒に頑張ろうぜ!」
四人はエルヴィンを囲んで次々に話しかける。
エルヴィンもどこか嬉しそうだ。ルナはそんな表情を見ながら、そっと後ろに下がる。
「エルヴィン、近衛隊っぽくないよな」
「そうそう、どっちかって言うと俺らより?」
「それは失礼だろ」
「失礼なもんか。近衛隊も警備隊も関係ないってエルヴィンは言ってくれたんだし」
わいわいと騒がしい会話をエルヴィンは穏やかに聞いている。
「エルヴィンさんは近衛隊時代も、魔物討伐の見回りをしてたくらいですからね」
エルヴィンの良さをわかってくれた隊員たちに気を良くしたルナは、自慢気に言った。
「……ルナ!」
慌てて振り返るエルヴィン。
「エルヴィンさんが国のために動いていたこと、知ってもらいたいじゃない?」
照れたように口をパクパクさせていたエルヴィンを見て、警備隊員たちは更に盛り上がる。
「まじか――!」
「近衛隊にもそんな奴いたんだな」
「この国も捨てたもんじゃないな」
「お前、凄いな!」
皆口々にエルヴィンを認め、褒め称えた。
エルヴィンはタジタジと皆の勢いに押されながらも照れている。
そんな様子を見てルナはニコニコ満足そうに微笑んだ。
エルヴィンの後ろに隠れていたルナを一人の警備隊員がすぐに見つけて、覗き込む。
「顔隠しちゃって、俺たちが怖いの? この国を守ってるのは俺たちだよー?」
「ミュラーの婚約者ってことは、この子も貴族のお嬢さん?」
もう一人の警備隊員もルナに近付き、からかい気味に話す。
エルヴィンは片手でルナを守るように隠した。
「……彼女は大切な友人だ。言いたいことがあるなら俺に言えばいい。彼女を巻き込まないで欲しい」
彼らよりも背の高いエルヴィンの圧に、警備隊員たちが一瞬たじろぐ。
「何だよ! 隊長に気に入られてるからっていい気になるなよ! お前なんか好き勝手やりやがって!」
「貴族だか何だか知らねーけど、この警備隊では身分なんて関係無いんだからな!」
次々に警備隊員たちがエルヴィンを罵る。しかしエルヴィンは、無表情のまま、ただ聞いていた。そのエルヴィンの態度にカッとなった隊員の一人が叫んだ。
「お前! 王女を怒らせて近衛隊をクビになったんだろ! どうせ近衛隊でもそんな態度だったんだろうな! 警備隊なんかに来てやる気ないんだろうが、お前みたいなのがいると迷惑なんだよ!」
「それは違う!!」
警備隊員の言葉に、思わずルナは前に出ていた。
「……ルナ?」
隣でエルヴィンが目を丸くしている。ルナは構わずに続けた。
「エルヴィンさんが近衛隊をクビになったのは、王女を庇って怪我した仲間の近衛隊員がクビにされそうになったことに抗議したからよ!」
皆、ルナの勢いに呆然としている。
「それに、この隊の人が危ない時に薬を探して回ったのもエルヴィンさんよ!!」
「え……」
ルナの言葉に警備隊員たちが顔を見合わせる。
「しかもエルヴィンさんは、仕事の時間以外に魔物討伐の見回りをした上に、夜間の見回り仕事だってしてるんだから!! 警備隊の仕事がどうでも良いと思ってるわけないじゃない!!」
「ルナ……」
一気にまくしたてて、息切れがする。はーはーと肩で息をするルナに、エルヴィンは目を瞬きながらも「ありがとう」と肩に手を置いた。
「俺の……命を救ってくれたのはミュラーさんだったんですね」
五人組の後ろの方にいた年若い隊員が呟きながら前に出る。
「あのとき、隊のために薬を探し回ってくれた人がいたって聞いてました! 命を救っていただいてありがとうございました!!」
その年若い隊員はエルヴィンの前に出ると、勢いよく頭を下げた。
他の四人も戸惑いながら見ている。
「いや。仲間の命が救えて良かった」
「……仲間……」
エルヴィンの言葉に年若い隊員が目を瞬きながら顔を上げる。
「近衛隊も警備隊も関係無い。特に警備隊は確かにこの国を守る要だ。国を守る仲間を助けるのは当たり前だ」
エルヴィンの言葉に年若い隊員の瞳がキラキラしているようにルナには見えた。
「そういや、ミュラーが深夜の警備をすすんで受けてくれてるって隊長が言ってたな……」
一人の隊員がボソッと呟く。
エルヴィンに一番食ってかかっていた隊員が、頭をガシガシとかきながらエルヴィンを見た。
「あ――、俺たち、近衛隊から来たってだけで、お前のこと勘違いしてたみたいだ。すまなかった」
「いや……」
「でも、お前も否定したり説明したりしないのが悪いんだぞ!」
謝罪した次の瞬間には、ビシッとエルヴィンも悪いと隊員が言う。
「ああ、すまない……」
「お前、そんな素直なのな」
素直に言葉を聞き入れるエルヴィンに、隊員も目を丸くし、エルヴィンを凝視して、笑った。
「俺はニコラってんだ。改めてよろしくな、ミュラー」
その隊員はエルヴィンに手を差し出す。
「よろしくニコラ。俺もエルヴィンで良い」
その手をエルヴィンが取ると、わっと他の四人から歓声があがった。
「何だよ、もっと早く話せば良かったな」
「悪かったな」
「隊のためにありがとな。これからも一緒に頑張ろうぜ!」
四人はエルヴィンを囲んで次々に話しかける。
エルヴィンもどこか嬉しそうだ。ルナはそんな表情を見ながら、そっと後ろに下がる。
「エルヴィン、近衛隊っぽくないよな」
「そうそう、どっちかって言うと俺らより?」
「それは失礼だろ」
「失礼なもんか。近衛隊も警備隊も関係ないってエルヴィンは言ってくれたんだし」
わいわいと騒がしい会話をエルヴィンは穏やかに聞いている。
「エルヴィンさんは近衛隊時代も、魔物討伐の見回りをしてたくらいですからね」
エルヴィンの良さをわかってくれた隊員たちに気を良くしたルナは、自慢気に言った。
「……ルナ!」
慌てて振り返るエルヴィン。
「エルヴィンさんが国のために動いていたこと、知ってもらいたいじゃない?」
照れたように口をパクパクさせていたエルヴィンを見て、警備隊員たちは更に盛り上がる。
「まじか――!」
「近衛隊にもそんな奴いたんだな」
「この国も捨てたもんじゃないな」
「お前、凄いな!」
皆口々にエルヴィンを認め、褒め称えた。
エルヴィンはタジタジと皆の勢いに押されながらも照れている。
そんな様子を見てルナはニコニコ満足そうに微笑んだ。