その恋、まぜるなキケン
真紘——?


晃に抱えられるような姿勢の真紘とばっちり目が合った。


こちら側に向いている黒いチェアーの背もたれで2人の体はほとんど隠れてはいるが、それがただの抱っこではないことだけは確かだった。


真紘もまさか旭が来るとは思っていなかったのか、瞬時に目を逸らして隠れるように晃の肩口に顔を(うず)める。


「おー来たか」


晃はわざとらしくそう言って、スピードをつけて自分の腰を打ち上げた。


「……んッ」


小さく跳ねる真紘の様子で、2人が情事の真っ最中ということがはっきりした。


「……はや……く、追い出してよッ」


「じゃあいい加減そのマグロをどうにかしろよ。旭に見てもらおうぜ、お前が気持ちよさそうにしてるとこ」


律動の最中に必死に言葉を発する真紘にも容赦はなかった。


きっと抵抗すれば、永遠とこの時間が続くことになるのは分かっていた。


真紘は彼の首裏に手を回し脚もクロスさせ、晃にしがみつくように密着してから自分も腰を動かし始めた。


晃は満足そうに「やればできるじゃねーか」と呟いた後、自分が呼びつけたくせに「今取り込み中だから後にしてくれ」と旭に向かって嫌な笑みを浮かべた。
 

旭は改めて思い知らされた。


この男はとにかく旭の存在が(うと)ましくて仕方がないのだ。


将也が、次の若頭を血の繋がりのない旭に譲ることを提案していたのは知っているし、幹部が猛反発したことも、そのせいで自分をよく思わない者がいることも知っている。


しかし、その将也はもういない。


旭は若頭の座なんて1ミリも興味がないし、そもそも将也のいないこの組にはなんの思い入れもないというのに。


ただ一方的に敵視されているのだ。
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