その恋、まぜるなキケン



宅配がくる予定もないのに突然インターホンが鳴り、旭は警戒しながらモニターを見に行った。


画面に映っていたのは怪しい人物ではなかったが、特に約束をしていたわけでもない綾人だった。


しかし旭は、彼がどうしてここへ来たのか察しがついたため、ドアを開けて中に招き入れる。


ドアが閉まった瞬間、頬に衝撃を受けた旭はドサっと床に倒れ込む。


拳が当たって歯で口内が切れたのか、口いっぱいに鉄の味が広がった。


「旭〜?誰だった……?」


真紘が呑気に廊下へ顔を出すと、床に倒れた旭の上に綾人が馬乗りになって胸ぐらを掴んでいた。


「綾人!?どうしたのっ!?」


真紘が駆け寄っても彼はお構いなしだった。


「なぁ、お前マジでいい加減にしろよ!何でこんなことになってんだよ!真紘を犯罪者にしたいのか?なぁ、なんか言えよ!」


「綾人落ち着いてッ!」


旭を殴ろうとする綾人の手を止めると、今度は真紘に怒りの矛先が向けられた。


「真紘も、自分が何してるか分かってるのか!?コイツのそばにいたいっていうのは百歩譲ってまだいい。だから俺も別れた!だけど、杉本晃と寝てるって?正気かよ!これ以上ヤクザに関わってどうすんだよ!このことお義母さんたちに話せるのか!?」


綾人の言うことは正論で、その怒りも真紘のことを思ってのことだと分かる。


でも、母親を引き合いに出すのはズルかった。


返す言葉もなく、真紘はただ黙って聞いているしかなかった。


「刑事さんの言ってることは正しい……でも真紘を責めるのは違う。全部俺が巻き込んだんだから、俺が悪い」 


「当たり前だ」


綾人は掴んでいた旭のシャツを乱暴に放した。


そして少し落ち着きを取り戻したのか、真紘に向き合って静かに言った。


「頼むから……真紘の取り調べとか、身元確認とか……そんなの絶対やりたくないからな……?」


声色から、綾人の切実さが伝わってくる。


警察官の綾人と関わることがあるとすれば、容疑者として逮捕されるか、あるいは被害者として、最悪死体になるかのどちらかだ。


そして杉本組と関わるということは、その両方の可能性があるのだ。
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