その恋、まぜるなキケン
ブーッブーッブーッ——


いつの間にか車の中で眠っていた旭は、スマホのバイブレーションで目を覚ました。


朝だというのに空は真っ黒な雲に覆われていて、いつ雨が降り始めてもおかしくなさそうだ。


スマホを確認すると、着信は今あまり話したくない相手からだった。


「もしも『今すぐSNS見れるか!?』」


言葉を被せてきた綾人に、もしもしくらい言わせろよと文句を言ってやりたかったが、彼が珍しく切羽詰まった様子だったためそこは目を瞑った。


「見れるけど一体何を見ろ……って……!?」


旭が自分のSNSを開くと、タイムラインはある話題で持ちきりで、綾人が何を見せたかったのかはすぐに分かった。


「どういうことだよこれ!」


『俺もついさっき確認したんだ』


〝2年前、指定暴力団杉本組の若頭が死んだのは自殺なんかじゃありません。私はその殺害現場を見ました。証拠品も持っています〟


年齢も、男か女かも、名前すら分からないアカウントの投稿が徐々に拡散されている。


『今こっちで投稿元のIPアドレスを探してる。ただ、特定できるかは分からないし少し時間がかかりそうなんだ。お前には杉本晃の方をお願いしたい。今近くにはいないだろ?これがアイツの投稿って線も残ってるし、そうじゃないなら必ず動きがあるはずだから』


「分かった。何か分かったらすぐ連絡くれ!」


通話を切り、旭はすぐにスマホのGPSアプリを起動した。


元々旭は、晃が使う可能性のある車全てにGPSを仕掛けており、普段からこれで彼の動きを追っていたのだ。


今は全て本家の位置にマークがついていた。


「もしもし亮太か?代行って今本家にいるんだよな!?」


旭は車を走らせながら本家にいる亮太に連絡を取った。


『兄貴……それが、朝になったらいなくなってて……!』


おそらくGPSは外されたのだろう。


しかしそれは追跡を警戒している証拠。


やはりあの投稿は晃ではなく本当にいた目撃者によるもので、晃はきっとその人物を探しているに違いなかった。


「とりあえずアイツは俺が探す。お前は組の中で情報を集めてくれ!」


『了解っす!』


投稿はついさっきだ。


絶対にまだ間に合う。


そう信じて旭は、晃が定期的に行っていた隅田川沿いのスラム街へ向かった。


空はいよいよゴロゴロと雷が鳴り出していた——。
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