その恋、まぜるなキケン
*
「クソがっ!!」
晃は車を走らせながらハンドルを叩いた。
突然眠りを覚まされたかと思えば、正体不明のアカウントによる謎の投稿でネットは大炎上。
もちろん、晃はそれがチンの仕業だということは分かっていた。
最近調子に乗っているとは思っていたが、まさかこんな事態になるとはさすがの晃も予想していなかった。
おまけに母親からは『何で始末しておかなかったの』ともっともな小言も言われ、機嫌が非常に悪い。
しかし、組とは関係のない外部の人間にチンを見張らせていたおかげで居場所が分かるのは幸いだった。
わざわざネットカフェに行って投稿し、今はなぜか例の事件の現場にいるらしい。
——警察に駆け込めばいいものを。
馬鹿な男だと晃はチンを嘲笑った。
そもそも、証拠があるなんて出まかせに決まっている。
指紋を拭き取った刃物は既に警察が回収しているし、その時のハンカチは燃やして処理をした。
残る証拠品といえば警察を殴った鈍器だが、それは確かスラム街の中に捨てたはずだ。
仮に見つかったとしても、雨風に曝されて数年も経った物から指紋が出るはずもない。
全て回収して、チンを葬ってしまえばもう晃は完全にあの事件から解放される。
「旭がいくら嗅ぎ回ろうと、もう何も出てこねぇよ」
晃は薄ら笑いを浮かべアクセルを踏み込んだ。