その恋、まぜるなキケン



晃が廃墟ビルの屋上に着くと、空がゴロゴロと鳴り始めた。


チンはまるで晃を待っていたかのように座り込んでいる。


「こんなとこにいないで、証拠握りしめて警察行けよ。なんなら送って行ってやろうか?」


晃がチンに近づきながら挑発すると、彼は豪快に声を上げて笑い出した。


「アハハハハ!愉快愉快。そんな物あるはずないと分かっていても、不安になったんだよなぁ?俺を探さずにはいられなかった。違うか?」


しかし挑発に乗せられたのは晃の方だった。


晃は彼の胸ぐらを掴み、落下しないギリギリの所まで押しやった。


「大人しくあの金で普通に暮らせば良かったものを。バカなやつ」


「いいさ、殺せばいい!アンタがこの後どうなるかを見届けられないことだけが残念だ!」


チンは両手を大きく横に伸ばす。


晃が彼を掴んでいた手を離すと、チンはそのまま背中から落下して地面に叩きつけられた。
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