その恋、まぜるなキケン
晃、真紘そしてその後ろに旭が続き3人が廊下を歩いていると、前から組長である杉本克典とその側近が歩いてきた。


晃たちは廊下の端に縦1列になり、克典に道を譲る。


彼はそのまま通り過ぎると思いきや、3人の前で足を止めた。
 

「晃」


「……はい」


「お前もそろそろ身を固めろ」


声こそ上げなかったものの、晃本人を含むその場にいた全員が目を見開き、顔を上げた。


それは実質、晃を若頭として認め、ゆくゆくは組を任せると言っているようなものだった。


「……相手はもう決まってます」


晃はハッキリと答え、真紘の肩を抱き寄せようとするが、旭が反射的に反応してその手を掴む。


「どうした?何か言いたげだな」


しかしそれ以上口を挟むことはできず、旭はゆっくりと手を下ろした。


「……そうか。日取りを決めたらまた伝える」


克典は2人のやり取りを一瞥して、再び歩いて行った。


「……らしいけど。さぁ、どうする?」


晃は楽しそうに旭の方を見る。


「……行きましょう」


晃はあくまで冷静に返した旭をつまらなそうに見てから真紘の方を向く。


「荷物、全部こっちに持って来とけよ?」


「え……?」


「遅かれ早かれここに住むことになるんだから、いつ来ても一緒だろ」


(はな)から真紘に選択権はなかった。


それだけ言って晃は歩き出した。


もし日取りが決まり組の中で夫婦だと認められれば、真紘はもう籠の中の鳥。


杉本組から、そしてこの世界からもう抜けられなくなってしまう。


「大丈夫、俺が絶対になんとかする……!」


旭は去り際に真紘の手を握り、そっと耳打ちする。


真紘は静かに頷いて2人の背中を見送った。


もう1秒たりとも無駄にはできない——。
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