その恋、まぜるなキケン
「組長が晃と真紘の婚姻を進めてる。もう時間がない……警察はなんか手がかりないのかよ」


旭は晃と真紘の婚礼の時期が迫っていることを電話で綾人に伝えた。


『俺だってどうにかしたいのはやまやまだ……けど、警察的には捜査の規模を縮小する方向で動いてる。だから、あまりアテにはしないでほしい……』


あれから旭は、暇さえあれば現場近くのスラム街へ赴き、聞き込みを続けた。


と言っても、質問に対しまともに返してくれる人物はわずかで、今のところ収穫は得られていない。


一方、真紘は完全に杉本の家に住むことになってしまったが、今までよりも旭の近くにいられるようになったのは唯一良かった点だ。


そのせいで、旭が連日聞き込みに出かけていることを知り、真紘は常にハラハラしていた。


「旭……今日も行くの?」


夜になって静かに玄関の方へ向かう旭にそっと声をかける。


「うん。今日はまたニューフェイスがいるかもしれないし」


代行補佐として朝から晩まで仕事をしながら、空いた時間は全て聞き込みに費やしている。


疲れているに決まっているのに、そんな様子は一切見せず気丈に振る舞う旭に胸が痛んだ。


「私のために頑張ってくれるのは本当に感謝しかない……でも、旭が倒れたら元も子もないから……!」


旭は、悲痛な表情で自分を見る真紘を安心させるように抱きしめた。


「大丈夫。俺に任せといて」


トントンと真紘の背中を優しく叩き、旭は真っ暗な外へと出かけて行った。
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