その恋、まぜるなキケン
*
旭が真紘からの不在着信に気が付いたのは、彼女が電話をかけてから約1時間後のことだった。
旭が真紘に『関わらないでほしい』と伝えたあの日以来、彼女からは一切連絡もなかったし、前みたいに繁華街で見かけるようなこともなかった。
きっと連絡先も削除してくれたんだろうと思っていたのに、ここにきて急に不在着信が入っていることに違和感を覚える。
何か用があるならメッセージがきていてもいいはずなのに、それもない。
嫌な予感しかしなかった。
旭のこういう勘は外れたことがない。
2年前のあの時もそうだった——。
当時若頭だった杉本将也から旭に突然送られてきた位置情報。
返信をしても電話をしても応答がなく、胸騒ぎがした旭はとにかくその場所へ急いだ。
位置情報が示していたのは東京下町の廃墟ビル。
1フロアずつ上っていき、最後に辿り着いた屋上で、将也が大量に血を流して倒れていて、もう既に息をしていなかった。
体に触れた時のあの冷たさは、今でも鮮明に覚えている。
もし万が一にでも真紘の身に同じようなことが起きているのだとしたら、じっとしてはいられない。
自分が彼女に連絡を取るなと言ったことなど関係なかった。
旭はすぐに真紘の番号に発信した。
しかし彼女は一向に出る気配はない。
鳴り続けるコール音に絶望しかけたその時、電話の向こうから聞こえたのは男の声だった。
「真紘には関わるなって言っただろ?」
旭は『せめて真紘の代理で出てるとかひと言くらい言えよ』と心の中で突っ込んだが、その声が真紘の婚約者である刑事だということは、言われなくてもすぐに分かった。
「もう会ってもいないし連絡もとってねぇよ。なのについ1時間前に着信があったから変だと思って折り返したんデス、刑事さん」
それを聞いて綾人は固まった。
彼は真紘が運ばれた病院から連絡を受けて彼女の元に来たからだ。
1時間前というと、ちょうど真紘が事故に遭ったタイミングだった。
「おーい!刑事さん聞こえてる?」
「……隅田川病院の救急外来だ」
「はっ?え?」
綾人はそれだけ伝えてスマホから耳を離した。
旭の戸惑う声が聞こえていたが、そのまま電話を切る。
旭は何が何だか分からなかったが、きっと真紘がそこにいるんだろうとその病院へ車を走らせた。
旭が真紘からの不在着信に気が付いたのは、彼女が電話をかけてから約1時間後のことだった。
旭が真紘に『関わらないでほしい』と伝えたあの日以来、彼女からは一切連絡もなかったし、前みたいに繁華街で見かけるようなこともなかった。
きっと連絡先も削除してくれたんだろうと思っていたのに、ここにきて急に不在着信が入っていることに違和感を覚える。
何か用があるならメッセージがきていてもいいはずなのに、それもない。
嫌な予感しかしなかった。
旭のこういう勘は外れたことがない。
2年前のあの時もそうだった——。
当時若頭だった杉本将也から旭に突然送られてきた位置情報。
返信をしても電話をしても応答がなく、胸騒ぎがした旭はとにかくその場所へ急いだ。
位置情報が示していたのは東京下町の廃墟ビル。
1フロアずつ上っていき、最後に辿り着いた屋上で、将也が大量に血を流して倒れていて、もう既に息をしていなかった。
体に触れた時のあの冷たさは、今でも鮮明に覚えている。
もし万が一にでも真紘の身に同じようなことが起きているのだとしたら、じっとしてはいられない。
自分が彼女に連絡を取るなと言ったことなど関係なかった。
旭はすぐに真紘の番号に発信した。
しかし彼女は一向に出る気配はない。
鳴り続けるコール音に絶望しかけたその時、電話の向こうから聞こえたのは男の声だった。
「真紘には関わるなって言っただろ?」
旭は『せめて真紘の代理で出てるとかひと言くらい言えよ』と心の中で突っ込んだが、その声が真紘の婚約者である刑事だということは、言われなくてもすぐに分かった。
「もう会ってもいないし連絡もとってねぇよ。なのについ1時間前に着信があったから変だと思って折り返したんデス、刑事さん」
それを聞いて綾人は固まった。
彼は真紘が運ばれた病院から連絡を受けて彼女の元に来たからだ。
1時間前というと、ちょうど真紘が事故に遭ったタイミングだった。
「おーい!刑事さん聞こえてる?」
「……隅田川病院の救急外来だ」
「はっ?え?」
綾人はそれだけ伝えてスマホから耳を離した。
旭の戸惑う声が聞こえていたが、そのまま電話を切る。
旭は何が何だか分からなかったが、きっと真紘がそこにいるんだろうとその病院へ車を走らせた。