その恋、まぜるなキケン
*
「下田組と派手にやりあったらしいな。一体どういう了見だ?」
若頭代行である晃に呼ばれた旭は、本家の組長の部屋にいた。
目の前には組長の杉本克典が腕を組んで椅子に座っている。
「……親父のこと言いたい放題言われてついカッとなりました。すんません」
「ハッ。よくもそんな見え透いた嘘がつけたもんだな」
同席していた晃が横からヤジを入れる。
「親父、すいませんでした。俺がここでちゃんとケジメをつけさせます」
旭は若頭代行である晃の補佐であり、つまり彼が何か不祥事を起こせばその責任は晃にも及ぶ。
なんとしても若頭の座が欲しい晃は、組長である自分の父親にアピールしたくて必死なのだ。
「……まぁ今回はいいだろう。だが2度目はないぞ」
組長は閉じた目を片方だけ開いて旭を睨んだ。
晃は不満気に舌打ちし、旭は無言で深々と頭を下げた。
旭と一緒に部屋を出た晃は、旭の手首を掴み彼を縁側から庭に突き落とした後、取り出したナイフで旭の手の平をグサリと地面に突き刺した。
しかし旭は声を上げるどころか、顔色も変えない。
「命拾いしたな。補佐なら補佐らしくしてろ。俺の足を引っ張るようなマネはすんじゃねぇ」
思いっきり突き刺されたせいか、飛沫がスーツに飛び散ってしまった。
これから真紘を迎えに行くというのに、余計な傷も増やされ旭は大迷惑だった。
内心そんなことを思いながら、ここは「すみません」と大人しく引き下がる。
あの事件の真相を明らかにするまでは、今のポジションを手放すわけにはいかなかった。
そのためなら喜んで晃の従順な犬になろうと決めている。
「下田組と派手にやりあったらしいな。一体どういう了見だ?」
若頭代行である晃に呼ばれた旭は、本家の組長の部屋にいた。
目の前には組長の杉本克典が腕を組んで椅子に座っている。
「……親父のこと言いたい放題言われてついカッとなりました。すんません」
「ハッ。よくもそんな見え透いた嘘がつけたもんだな」
同席していた晃が横からヤジを入れる。
「親父、すいませんでした。俺がここでちゃんとケジメをつけさせます」
旭は若頭代行である晃の補佐であり、つまり彼が何か不祥事を起こせばその責任は晃にも及ぶ。
なんとしても若頭の座が欲しい晃は、組長である自分の父親にアピールしたくて必死なのだ。
「……まぁ今回はいいだろう。だが2度目はないぞ」
組長は閉じた目を片方だけ開いて旭を睨んだ。
晃は不満気に舌打ちし、旭は無言で深々と頭を下げた。
旭と一緒に部屋を出た晃は、旭の手首を掴み彼を縁側から庭に突き落とした後、取り出したナイフで旭の手の平をグサリと地面に突き刺した。
しかし旭は声を上げるどころか、顔色も変えない。
「命拾いしたな。補佐なら補佐らしくしてろ。俺の足を引っ張るようなマネはすんじゃねぇ」
思いっきり突き刺されたせいか、飛沫がスーツに飛び散ってしまった。
これから真紘を迎えに行くというのに、余計な傷も増やされ旭は大迷惑だった。
内心そんなことを思いながら、ここは「すみません」と大人しく引き下がる。
あの事件の真相を明らかにするまでは、今のポジションを手放すわけにはいかなかった。
そのためなら喜んで晃の従順な犬になろうと決めている。