その恋、まぜるなキケン

交錯

「真紘明日休みだよな？気分転換にどっか行くか？」


お風呂から上がった旭は、リビングでくつろいでいる真紘に声をかけた。


今晩から明日にかけては、旭がセーフハウスに泊まって真紘の警護をすることになっている。


「ごめん！明日は綾人と式場見学の予約してるんだ……」


「そっか……それは超大事な予定だな。もう色々決まってんの？」


「ううん！まだ何も。この状況が落ち着かないと式もできないし、のんびり考えようかって話してる……」


正直この生活をいつまで続ければいいかのかは旭にも分からない。


ヤクザと一度関われば、生きている限りリスクは伴い続ける。


しかし一生このままというわけにもいかないし、どこかのタイミングで折り合いをつけなくてはならない。


そろそろ綾人と話をつける必要がありそうだ。


自分が関わらなければこんなことにはならなかったのに……と、旭は自分を責めずにはいられない。


それに気づいた真紘はこう付け足した。


「旭のせいじゃないからね？それは違うから！私はこうしてまた旭に会えて嬉しかったもん！」


それは旭だって同じだ。


でも、もし彼女が結婚して護衛も必要なくなれば、真紘とはもう会うこともなくなる。


むしろ、今度こそ関わることは許されない。


カウントダウンが既に始まっているのかと思うと、旭は何とも言えない気持ちになった。


「ということで明日は綾人が一緒だし、旭は私のことなんて気にせず、たまにはゆっくりしてね？」


「いや、いいよ。いくらあの人が刑事とはいえ、２人に何かあったら取り返しがつかないし。どうせ暇だからさ！」


そうは言ったものの、元カノとその婚約者の式場見学を見守るというのは、なかなか複雑な状況だ。


旭は、高校生の頃に真紘が『早く結婚したい』と言っていたのを思い出した。


あんなことにならなければ、今彼女の隣にいたのは自分だったかもしれないと思うと、なんだかやるせない気持ちになる。


真紘の夢が叶う、めでたいことのはずなのに、旭は心から彼女を祝福してあげられない未練がましい自分が嫌になった。
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