その恋、まぜるなキケン
——コンコン
「旭、入るよ」
真紘が桶とタオルを持って入ってきた。
そして浸したタオルを絞り、そのままベッドサイドに膝立ちしてじっと旭を見てスタンバっている。
「え……ナニその手……」
「何って、背中とか拭いてあげようと思って!」
「いいって!!なんか恥ずいし!」
旭は胸を隠すように腕をクロスさせ、恥ずかしがって見せた。
真紘がとんでもないことを言い出した。
この場で服を脱げと言うのだ。
「もう何今さら恥ずかしがってんの〜?旭の裸なんて見たことあるし、私の裸だって知ってるくせ……ごめん、なんでもない忘れて……」
真紘はしまったという顔で口を閉じる。
付き合っていた高校生の頃、既にヤることはヤッていたし、確かに今さら裸体くらいどうということもない。
それに真紘は看護師として普段からこういうことも仕事のうちだろう。
そんなことは分かっていたが、自分ばかりが彼女を意識しているのが悔しくて、旭は急に気を変えた。
「……やっぱ拭いてほしいわ」
「えっ……!?」
上半身の服を脱いで、強制的にその状況を作り出した。
「……これ、普通に拭いていいんだよね?」
真紘は旭の背中一面に彫られた刺青を見て固まった。
入院患者の中にもたまに刺青の入った人はいるが、こんなに大きな模様を実際に見るのは初めてだった。
「うん普通に大丈夫。ごめん、こんなの見るの初めてだよな」
「これって鳥か何か……?」
「そう、鳳凰。前の若頭の将也さんと兄弟鳥にしてもらったんだ」
旭がこんなに慕っているということは、きっと彼もヤクザらしくない、いい人だったに違いないと真紘は思った。
真紘はその鳳凰を撫でてから、そのまま手を添えて祈るように目を瞑る。
「……真紘?何してんの?」
「んー?将也さんにお願いしてるの。旭を守ってくださいって」
彼女は目を閉じたまま答えた。
真紘の手のひらはひんやりとしているのに、不思議と温かさも感じる。
直に触れられているという事実が旭の鼓動を加速させた。
自分が変な気を起こさないうちに、一旦離れた方が良さそうだ。
「下脱ぎたいからあっち向いてて。一応、嫁入り前のコの前で、さすがに下は脱がない方がいいだろ?」
「一応じゃなくて、ちゃんと嫁入り前だからッ!言われなくても出て行きますよ!なんか食べれそうなもの作ってくる!」
真紘はプリプリして部屋を出て行った。
「……真紘、結婚なんてやめちゃえよ……」
彼女の足音が遠ざかるのをきちんと確認してから、旭は蚊の鳴くような声で本音を漏らした。
「旭、入るよ」
真紘が桶とタオルを持って入ってきた。
そして浸したタオルを絞り、そのままベッドサイドに膝立ちしてじっと旭を見てスタンバっている。
「え……ナニその手……」
「何って、背中とか拭いてあげようと思って!」
「いいって!!なんか恥ずいし!」
旭は胸を隠すように腕をクロスさせ、恥ずかしがって見せた。
真紘がとんでもないことを言い出した。
この場で服を脱げと言うのだ。
「もう何今さら恥ずかしがってんの〜?旭の裸なんて見たことあるし、私の裸だって知ってるくせ……ごめん、なんでもない忘れて……」
真紘はしまったという顔で口を閉じる。
付き合っていた高校生の頃、既にヤることはヤッていたし、確かに今さら裸体くらいどうということもない。
それに真紘は看護師として普段からこういうことも仕事のうちだろう。
そんなことは分かっていたが、自分ばかりが彼女を意識しているのが悔しくて、旭は急に気を変えた。
「……やっぱ拭いてほしいわ」
「えっ……!?」
上半身の服を脱いで、強制的にその状況を作り出した。
「……これ、普通に拭いていいんだよね?」
真紘は旭の背中一面に彫られた刺青を見て固まった。
入院患者の中にもたまに刺青の入った人はいるが、こんなに大きな模様を実際に見るのは初めてだった。
「うん普通に大丈夫。ごめん、こんなの見るの初めてだよな」
「これって鳥か何か……?」
「そう、鳳凰。前の若頭の将也さんと兄弟鳥にしてもらったんだ」
旭がこんなに慕っているということは、きっと彼もヤクザらしくない、いい人だったに違いないと真紘は思った。
真紘はその鳳凰を撫でてから、そのまま手を添えて祈るように目を瞑る。
「……真紘?何してんの?」
「んー?将也さんにお願いしてるの。旭を守ってくださいって」
彼女は目を閉じたまま答えた。
真紘の手のひらはひんやりとしているのに、不思議と温かさも感じる。
直に触れられているという事実が旭の鼓動を加速させた。
自分が変な気を起こさないうちに、一旦離れた方が良さそうだ。
「下脱ぎたいからあっち向いてて。一応、嫁入り前のコの前で、さすがに下は脱がない方がいいだろ?」
「一応じゃなくて、ちゃんと嫁入り前だからッ!言われなくても出て行きますよ!なんか食べれそうなもの作ってくる!」
真紘はプリプリして部屋を出て行った。
「……真紘、結婚なんてやめちゃえよ……」
彼女の足音が遠ざかるのをきちんと確認してから、旭は蚊の鳴くような声で本音を漏らした。