その恋、まぜるなキケン



社会人になってから1、2年経った頃のこと。


2人の出会いは知り合いを介した合コンだった。


堀越(ほりこし)真紘(まひろ)——


自己紹介で彼女はそう言った。


第一印象は〝普通に可愛いコ〟


他の女子に交ざって一見ニコニコ楽しそうにはしていたが、それが精一杯演じている顔なのを綾人はすぐに見抜いた。


自分も人数合わせで呼ばれた口だったし、もしかしたら彼女もそうなのかもしれないと、綾人は勝手に親近感をもった。


なんとなく、誰が誰を狙っているのかが分かり始めた頃、隣の女子に何やら耳打ちをしてから真紘が席を立った。


それを見た綾人は、追うように自分も「ちょっとトイレ」と告げて立ち上がる。


彼女はてっきりトイレに行ったと思ったのに、少し待ってもトイレからは誰も出てこない。


そうなると彼女は一体どこへ行ったのだろう?


入口から一旦外に出てみると、そこには探していた彼女が店の前で空を見上げていた。


「あれ?こんなとこでサボってる人がいるー」


綾人が軽いノリで声をかけると、真紘は「えっと……」と困った顔をした。
  

椎名(しいな)椎名(しいな)綾人(あやと)だよ」


「あー!椎名さん!」


ちゃんと名前の聞き覚えはあっあようで、彼女はスッキリした顔で嬉しそうに笑った。


今回は作り笑いなんかじゃない、自然な笑顔だ。


それからしばらくそこで話をして、なんとなく意気投合した2人は連絡先も交換した。


そしてその後も定期的に会うようになる。


『高校の恋愛を引きずっている』と真紘から聞いていたから、綾人は2人の関係を無理に進めるようなことはしなかった。


ただ穏やかに真紘の隣で彼女を見守ったのだ。


お互いに惹かれ合った2人が付き合うようになるまで意外と時間はかからなかった。


告白は真紘からだった——。
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