その恋、まぜるなキケン
接触
旭と真紘が再び結ばれてから数日後。
真紘は〝落合宏樹〟名義のクレジットカードと名刺を手に、指定された六本木にある高級ホテルのレストランに来ていた。
目の前には先日バーで知り合ったXYZの男。
どう見ても気軽に待ち合わせするのに使う店ではなかった。
会社経営者とかそのクラスの人なのかもしれないと思い、事前に落合の名前を検索してみたがそれらしき人物はヒットしなかった。
「来てくれないかと思った」
「さすがにコレを持ったままではいられないです」
真紘はテーブルクロスの上をスライドするようにクレジットカードを差し出した。
「……この前は結構手応え感じてたんだけどなぁ。もしかして、彼氏いる感じ?」
「……ごめんなさい。今日はこれを返しに来ただけなんです」
「冷てぇな……せっかく共通の知り合いがいるんだからさ。〝旭〟の話でもしよーぜ?」
真紘は聞き間違えたのかと自分の耳を疑った。
でも確かに今、彼の口からは〝旭〟という名前が出た。
それに〝共通の知り合い〟とも言っていた。
それが織部旭でないと捉える方が難しい。
真紘はつい今朝方、旭から忠告を受けたばかりだった。
オールバックに銀縁の眼鏡をかけた長身の男を見かけたらすぐに逃げろ——と。
今目の前にいる彼は、まさに言われた通りの特徴の人物だった。
カードと名刺に記された落合宏樹という名前ですっかり油断をしていたが、名義くらい彼らの手にかかればどうにでも工作できるはずだと今さら気づく。
「……何の話なのかよく分からないです」
「それならそれでいいけどな。後悔してもしらねーけど」
男はニヤニヤしながら真紘の方を見てきた。
こんな心理戦に慣れていない真紘がこれ以上とぼけるのは難しく、大人しく従うしかなかった。
「何が目的ですか……?」
「とりあえず場所変えよーぜ」
真紘は問答無用でエレベーターに乗せられて、ホテルのさらに上の階の一室まで連れて行かれた。
部屋の中は嗅いだことのない甘い香りが充満していて、あまりのキツさにウッと息を止める。
しかしその時にはもう手遅れで、突然体に力が入らなくなった真紘はその場に倒れ込む。
支えてもらったおかげで転ばずに済んだが、「おやすみ」という声が聞こえたのを最後に、意識を手放した。
真紘は〝落合宏樹〟名義のクレジットカードと名刺を手に、指定された六本木にある高級ホテルのレストランに来ていた。
目の前には先日バーで知り合ったXYZの男。
どう見ても気軽に待ち合わせするのに使う店ではなかった。
会社経営者とかそのクラスの人なのかもしれないと思い、事前に落合の名前を検索してみたがそれらしき人物はヒットしなかった。
「来てくれないかと思った」
「さすがにコレを持ったままではいられないです」
真紘はテーブルクロスの上をスライドするようにクレジットカードを差し出した。
「……この前は結構手応え感じてたんだけどなぁ。もしかして、彼氏いる感じ?」
「……ごめんなさい。今日はこれを返しに来ただけなんです」
「冷てぇな……せっかく共通の知り合いがいるんだからさ。〝旭〟の話でもしよーぜ?」
真紘は聞き間違えたのかと自分の耳を疑った。
でも確かに今、彼の口からは〝旭〟という名前が出た。
それに〝共通の知り合い〟とも言っていた。
それが織部旭でないと捉える方が難しい。
真紘はつい今朝方、旭から忠告を受けたばかりだった。
オールバックに銀縁の眼鏡をかけた長身の男を見かけたらすぐに逃げろ——と。
今目の前にいる彼は、まさに言われた通りの特徴の人物だった。
カードと名刺に記された落合宏樹という名前ですっかり油断をしていたが、名義くらい彼らの手にかかればどうにでも工作できるはずだと今さら気づく。
「……何の話なのかよく分からないです」
「それならそれでいいけどな。後悔してもしらねーけど」
男はニヤニヤしながら真紘の方を見てきた。
こんな心理戦に慣れていない真紘がこれ以上とぼけるのは難しく、大人しく従うしかなかった。
「何が目的ですか……?」
「とりあえず場所変えよーぜ」
真紘は問答無用でエレベーターに乗せられて、ホテルのさらに上の階の一室まで連れて行かれた。
部屋の中は嗅いだことのない甘い香りが充満していて、あまりのキツさにウッと息を止める。
しかしその時にはもう手遅れで、突然体に力が入らなくなった真紘はその場に倒れ込む。
支えてもらったおかげで転ばずに済んだが、「おやすみ」という声が聞こえたのを最後に、意識を手放した。