【完結】私の恋人の裏の顔は、最低な詐欺師でした。
「……イヤ」
見たこともない拓斗の顔に、狂気を感じる。
「こんなにお願いしてるのに、戻って来てくれないのか?」
「イヤだ……絶対に戻らない」
この人は、拓斗じゃない。こんなの、拓斗じゃない。
「……そうか。なら仕方ないな」
「え……?」
私から離れた拓斗は、キッチンに行き包丁を取り出す。
そして再び、私の元へと戻ってくるーーー。
「え……。拓斗、何するつもり……?」
まさか……私を殺すつもりなの?
「侑里が俺のお願いを、聞いてくれないのが悪いんだよ」
動けなくなった私にじわじわ近づくと、拓斗は包丁を私に向けてくる。
「や……やめて……」
私……拓斗に殺される……。
「警察に言わないって約束してくれるなら、手荒な真似はしないよ、侑里」
「こんなこと……許されると思ってるの……? こんなことしても、罪を増やすだけだよ?」
なんとか拓斗を説得しないと……。
「侑里が俺のお願いを聞いてくれれば、それでいいんだよ?……な、侑里?」
「っ……こんなことしたって、許されないのに」
私のその言葉に、拓斗は「なんか勘違いしてるけどさ、これって騙されるヤツらが悪いだろ?」と微笑んだ。