新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜
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リボンが飾られている襟元や胸上は切り返しの白のブラウス生地。上着とスカートの布地は濃紺。スカート部分は、シンメトリーに斜めにフリルレースをあしらい、中からは何段ものフリルスカートが覗き、パニエでボリュームを出した。銀色の頭には揃いの生地で作られた濃紺のボンネットを被った、ドールの様な外見の少女がルクセイア公爵家の馬車の窓から、町を眺めやる。
シルヴィアが馬車から降り立てば、街行く人々は足を止めてその姿に息を飲んだり、感嘆した。
カフェで苺のソテー入り、レモンカスタードムースのケーキとローズティーを頂た後は、公園を散策。
思えば公爵家から馬車を出して貰って、普通に外出するよりもこっそりと抜け出し、下町に繰り出す方が多い気がする。
(たまにはこういう外出もいいものね、たまには……)
シルヴィアとしては、やはり一人で自由気ままに外出する方が性には合っているが、貴族街へ繰り出すには公爵家の馬車で外出するしかない。
下町グルメを楽しみたい時もあれば、たまには貴族に流行りのカフェやスイーツを堪能したい日もある。
最後にショコラ専門店で、使用人へのお土産と自分の食べたい物を選んで帰宅という、充実した外出を楽しんだ一日だった。
帰宅して邸に着くと、大きく開け放たれた玄関扉をくぐり、使用人達に出迎えられる。
いつも通りの帰宅風景、かと思いきや奥から騎士服姿のアレクセルがこちらにやってきた。
「お帰りシルヴィア、待っていましたよ。ああ、今日のドレスもとても素敵です」
「だ、旦那様?ただいま戻りました。旦那様こそ珍しくお早いご帰宅だったのですね、お帰りなさいませ」
相変わらず帰りが遅かったり、会えない日も多いアレクセルなので、自分の外出中に先に帰って来ているとは、シルヴィアも思いもしなかった。
「町に出ていたと聞きましたが」
「はい、カフェや気になっていたショコラのお店に行きました」
「楽しそうでなによりです」
「はい、とても楽しかったです。ありがとうセイン」
振り返って、後ろにいるセインに感謝を述べる。普段はあまり表情変化があまりない彼だが、にこりといい笑顔で「とんでもございません」と微笑む。まだ十九歳だという彼の、年相応の表情。意外な反応を見せるセインにシルヴィアは瞠目した。
そんな様子を目の当たりにして、アレクセルは怨みの念を込めながらセインを睨み付ける。当然後ろを向くシルヴィアには、アレクセルの顔は見えていない。
「シルヴィア。これからは町への外出は、私が全て付き合います」
「えっ、旦那様はとてもお忙しいですよね?それに、セインは護衛として付いてきてくれたんです」
護衛ならセインが適任だと、トレースに言われて付いてきてもらった。執事直々の人選なので、シルヴィアも安心して任せることにした。
しかし護衛という言葉に火が付いたのか、アレクセルは自分の胸に手を当て懇願し始める。
「護衛なら、是非私にお任せ下さい。必ずお守り致します」
「だ、旦那様を護衛役にだなんて……!?」
「普段は騎士をしておりますのでご安心下さい」
「知ってますけどっ」
王太子の近衛騎士団長様が直々に、自分の護衛を買って出ようとしてくるが、流石にシルヴィアは憚られた。それでも「遠慮なさらずに」と騎士としての自分をアレクセルは売り込んでこようとする。
(遠慮するに決まってるじゃないですか!)
気圧される中、シルヴィアは咄嗟の思い付きを口にする。
「晩餐にはまだ早いようですから、お茶の時間に致しませんか?よければ旦那様もご一緒に」
「誘って下さるのですかっ?」
ぱっと喜色を讃えたアレクセルの表情に、シルヴィアは密かに胸を撫で下ろす。どうにか話題を逸らすことが出来た。
丁度この場に揃っている使用人達にお願いをして、お茶を寝室の方へ運んで貰うことにした。
シルヴィアが馬車から降り立てば、街行く人々は足を止めてその姿に息を飲んだり、感嘆した。
カフェで苺のソテー入り、レモンカスタードムースのケーキとローズティーを頂た後は、公園を散策。
思えば公爵家から馬車を出して貰って、普通に外出するよりもこっそりと抜け出し、下町に繰り出す方が多い気がする。
(たまにはこういう外出もいいものね、たまには……)
シルヴィアとしては、やはり一人で自由気ままに外出する方が性には合っているが、貴族街へ繰り出すには公爵家の馬車で外出するしかない。
下町グルメを楽しみたい時もあれば、たまには貴族に流行りのカフェやスイーツを堪能したい日もある。
最後にショコラ専門店で、使用人へのお土産と自分の食べたい物を選んで帰宅という、充実した外出を楽しんだ一日だった。
帰宅して邸に着くと、大きく開け放たれた玄関扉をくぐり、使用人達に出迎えられる。
いつも通りの帰宅風景、かと思いきや奥から騎士服姿のアレクセルがこちらにやってきた。
「お帰りシルヴィア、待っていましたよ。ああ、今日のドレスもとても素敵です」
「だ、旦那様?ただいま戻りました。旦那様こそ珍しくお早いご帰宅だったのですね、お帰りなさいませ」
相変わらず帰りが遅かったり、会えない日も多いアレクセルなので、自分の外出中に先に帰って来ているとは、シルヴィアも思いもしなかった。
「町に出ていたと聞きましたが」
「はい、カフェや気になっていたショコラのお店に行きました」
「楽しそうでなによりです」
「はい、とても楽しかったです。ありがとうセイン」
振り返って、後ろにいるセインに感謝を述べる。普段はあまり表情変化があまりない彼だが、にこりといい笑顔で「とんでもございません」と微笑む。まだ十九歳だという彼の、年相応の表情。意外な反応を見せるセインにシルヴィアは瞠目した。
そんな様子を目の当たりにして、アレクセルは怨みの念を込めながらセインを睨み付ける。当然後ろを向くシルヴィアには、アレクセルの顔は見えていない。
「シルヴィア。これからは町への外出は、私が全て付き合います」
「えっ、旦那様はとてもお忙しいですよね?それに、セインは護衛として付いてきてくれたんです」
護衛ならセインが適任だと、トレースに言われて付いてきてもらった。執事直々の人選なので、シルヴィアも安心して任せることにした。
しかし護衛という言葉に火が付いたのか、アレクセルは自分の胸に手を当て懇願し始める。
「護衛なら、是非私にお任せ下さい。必ずお守り致します」
「だ、旦那様を護衛役にだなんて……!?」
「普段は騎士をしておりますのでご安心下さい」
「知ってますけどっ」
王太子の近衛騎士団長様が直々に、自分の護衛を買って出ようとしてくるが、流石にシルヴィアは憚られた。それでも「遠慮なさらずに」と騎士としての自分をアレクセルは売り込んでこようとする。
(遠慮するに決まってるじゃないですか!)
気圧される中、シルヴィアは咄嗟の思い付きを口にする。
「晩餐にはまだ早いようですから、お茶の時間に致しませんか?よければ旦那様もご一緒に」
「誘って下さるのですかっ?」
ぱっと喜色を讃えたアレクセルの表情に、シルヴィアは密かに胸を撫で下ろす。どうにか話題を逸らすことが出来た。
丁度この場に揃っている使用人達にお願いをして、お茶を寝室の方へ運んで貰うことにした。