新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜
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静寂のまま時が進む中「そういえば……」と、ぽつりとシルヴィアが呟く。
急に呼びかけられ、寝る気配のないアレクセルは瞬時に返事をする。
「は、はいっ」
「兄弟以外と一緒に眠るなんて、緊張してしまいます」
良かった。少しは意識してくれているようだと、アレクセルは僅かに安堵したのも束の間。すぐにシルヴィアは、何か思い立ったような反応を見せた。
「ハッ。こ、これはもしや……朝までこのままなら、これが結婚初日のやり直しという事となり……初夜が完遂されたということになるのでしょうか?」
「え」
顔を赤らめて呟くシルヴィアは、まさか夫婦の閨事が、同じ布団で寝るだけだとでも思っているのだろうか……?
アレクセルは心中で推察したが、「いや、そんなまさか」とすぐに考えを打ち消しかけた。
しかし当たっていたとすると、この純粋無垢なシルヴィアを王太子は心配していたのかもしれないと、新たな考えが浮かぶ。
(それはそれでお節介と過保護がいきすぎて、気持ちが悪いから殿下の事は、考えないでおこう)
今はシルヴィアと自分の、夫婦としての関係性のみを考え、全力で向き合っていくべきだ。
グルグルと脳内では色んな思いが巡っている中、隣でシルヴィアは寝息を立て始める。
(早っ!?)
本当に眠ってしまっているのか、身を乗り出して寝顔を確認すると、そこにあるのは天使のような寝顔。しかし、とある失態に気付く事になる。
(しまった……寝る前の口付けを強請りそびれてしまった……)
何という事だ、タイミングを模索していたら、逃してしまうとは。仕事では、このようなヘマは絶対にしないのに。就寝前のお休みのキスと、おはようのキスは必須だということを、近々話しておかなければいけない。
アレクセルは、眠るシルヴィアの頬にこっそりと顔を近づけ、軽く口付けた。ふわりと甘い香りが鼻腔を擽る。この状況下で我慢するなど、試練を通り越して拷問かもしれないと、ふと思ってしまう。
更に時刻が過ぎ、相変わらず寝る気配のないアレクセルは、未だ目を閉じる事なくシルヴィアを観察し続けていた。騎士である彼は、徹夜や眠りを細く刻む事には慣れていて、これに至っては全く苦ではない。
すると微かに瞼を震わせたシルヴィアが、寝返りを打って、アレクセルに背を向けてしまった。
寝顔が見れなくて残念に思う。アレクセルが、背を向けるシルヴィアを見つめる中、少しずつその背中が遠ざかっていってしまう。
ズリズリと寝台の端に身を寄せていくシルヴィアを、アレクセルは咄嗟に背後から抱き止めた。
「ふぁっ!?」
シルヴィアの意識が、いきなりの事態に混乱を期す。実は半分覚醒した際に、こっそりアレクセルから距離を取ろうと思って移動したのだが、逆に接近どころか密着されてしまうとは。これは想定外の事態だった。
「落ちてしまいますよ」
抱きとめられたまま、耳の近くで囁かれると、アレクセルの吐息が耳殻を擽る。あまりの事態に、シルヴィアの意識は完全に覚醒してしまった。
「えっ、あ、あ、ありがとう……ございます?」
狼狽している最中だが、一応お礼は言っておいた。だが、その後も腕が解かれる事なく、抱きとめられたまま。
(ええっ!?まさかこのまま!?)
気になってチラリと後ろを向くと、アレクセルのアメジストの瞳と目が合った。しかも何故かニコリと微笑まれた。
(え、何で目を閉じてないのですか旦那様!?)
かなり気になるけども、何度もチラチラと後ろを確認する事は躊躇わられたので、諦めてこのまま眠りにつく事にした。
(寝られるかしら……?)
急に呼びかけられ、寝る気配のないアレクセルは瞬時に返事をする。
「は、はいっ」
「兄弟以外と一緒に眠るなんて、緊張してしまいます」
良かった。少しは意識してくれているようだと、アレクセルは僅かに安堵したのも束の間。すぐにシルヴィアは、何か思い立ったような反応を見せた。
「ハッ。こ、これはもしや……朝までこのままなら、これが結婚初日のやり直しという事となり……初夜が完遂されたということになるのでしょうか?」
「え」
顔を赤らめて呟くシルヴィアは、まさか夫婦の閨事が、同じ布団で寝るだけだとでも思っているのだろうか……?
アレクセルは心中で推察したが、「いや、そんなまさか」とすぐに考えを打ち消しかけた。
しかし当たっていたとすると、この純粋無垢なシルヴィアを王太子は心配していたのかもしれないと、新たな考えが浮かぶ。
(それはそれでお節介と過保護がいきすぎて、気持ちが悪いから殿下の事は、考えないでおこう)
今はシルヴィアと自分の、夫婦としての関係性のみを考え、全力で向き合っていくべきだ。
グルグルと脳内では色んな思いが巡っている中、隣でシルヴィアは寝息を立て始める。
(早っ!?)
本当に眠ってしまっているのか、身を乗り出して寝顔を確認すると、そこにあるのは天使のような寝顔。しかし、とある失態に気付く事になる。
(しまった……寝る前の口付けを強請りそびれてしまった……)
何という事だ、タイミングを模索していたら、逃してしまうとは。仕事では、このようなヘマは絶対にしないのに。就寝前のお休みのキスと、おはようのキスは必須だということを、近々話しておかなければいけない。
アレクセルは、眠るシルヴィアの頬にこっそりと顔を近づけ、軽く口付けた。ふわりと甘い香りが鼻腔を擽る。この状況下で我慢するなど、試練を通り越して拷問かもしれないと、ふと思ってしまう。
更に時刻が過ぎ、相変わらず寝る気配のないアレクセルは、未だ目を閉じる事なくシルヴィアを観察し続けていた。騎士である彼は、徹夜や眠りを細く刻む事には慣れていて、これに至っては全く苦ではない。
すると微かに瞼を震わせたシルヴィアが、寝返りを打って、アレクセルに背を向けてしまった。
寝顔が見れなくて残念に思う。アレクセルが、背を向けるシルヴィアを見つめる中、少しずつその背中が遠ざかっていってしまう。
ズリズリと寝台の端に身を寄せていくシルヴィアを、アレクセルは咄嗟に背後から抱き止めた。
「ふぁっ!?」
シルヴィアの意識が、いきなりの事態に混乱を期す。実は半分覚醒した際に、こっそりアレクセルから距離を取ろうと思って移動したのだが、逆に接近どころか密着されてしまうとは。これは想定外の事態だった。
「落ちてしまいますよ」
抱きとめられたまま、耳の近くで囁かれると、アレクセルの吐息が耳殻を擽る。あまりの事態に、シルヴィアの意識は完全に覚醒してしまった。
「えっ、あ、あ、ありがとう……ございます?」
狼狽している最中だが、一応お礼は言っておいた。だが、その後も腕が解かれる事なく、抱きとめられたまま。
(ええっ!?まさかこのまま!?)
気になってチラリと後ろを向くと、アレクセルのアメジストの瞳と目が合った。しかも何故かニコリと微笑まれた。
(え、何で目を閉じてないのですか旦那様!?)
かなり気になるけども、何度もチラチラと後ろを確認する事は躊躇わられたので、諦めてこのまま眠りにつく事にした。
(寝られるかしら……?)