ー野に咲く花の冒険譚ー
何があっても死なないとは言え,とうとうそんなゲスい真似まで考え付いたのか。
反対するような正気の人間はもういなくなってしまったのか。
それより,得体の知れない症状を出している僕を連れてきたと言うことは。
「……他のフラワー病罹患者は,全員死んだのか? 何故? どうやって? いくらなんでも,子供を抜いたって全員寿命な訳がない」
そんなことが起きるなら,この病はとっくにこの世から消えている。
「違う。安心しろ,これはお前だから可能な事なんだ」
先を促す鋭い視線に,王は深くため息をはいた。
「この間の血液検査でな,新しいことが分かった。お前の花からは,感染する粉末は出ておらん。安心して同行させられる。それに,どうもお前の花は強い。返り討ち同士の場面になった時,お前の花は他の花を食らうだろう」
「は……」
本気で言っているのか,このおっさんは。
僕は不愉快に顔を歪め,何を企むと睨み付ける。
「……ふーーー……。残念ながら,それは勘違いだ。王もまもなく感染する。なぜなら,僕のおじい」
「あぁ,宰相は残念であった。その時はまだ,お前の花にも感染能力があったのだからな」