ー野に咲く花の冒険譚ー
「なぜ僕が可哀想なんだ?」
フランクに近寄ってきたタルトへ問う。
「気にするな。あいつは根が性悪でな,年齢と共に治ってきたんだが……
母親を早くに亡くしててな,厳しかった父親もあいつまでと怖がって激甘に接するようになっちまったせいで我が儘なんだよ」
「ココラティエもそれなりの経験があるのか。……大変だな」
困ったように答えたタルトは,僕との会話を続けた。
「そうだろ? ただあいつは人の背負うものを考えるより先に可哀想と口にするきらいがある。自身に悪気はないがそういうやつだ。さっきは悪い」
「? 僕は気にしていない。それに,何故お前が謝るんだ?」
関係ないだろうと指摘すれば,タルトは苦笑する。
「ココが幼馴染みだからさ。今まで強く言ったことも無かったしな」
幼馴染みだったら,謝るのか。
僕は表面上理解したふりをして,頷いた。
どれくらいか歩き,タンマを掛ける。
「……すまない,これ以上は歩けそうにない」
荒い息で,寧ろここまで歩けていることが奇跡なくらいだと思い出す。
城までは気絶させられ運ばれただけだったから忘れていたものの,自分はずっと狭い敷地で生きてきた身。
体力など細くしかない。
1人におぶさり,幸いにも気のいい周りの人間に荷物を預ける。
たまに自分でも歩き,そのうち夜の休憩に入った。