ー野に咲く花の冒険譚ー




「ジョン」



もう声をかけてこないのかと思っていた僕は,その意外な人物に顔をあげる。

女騎士は隊員に1人しかいないため,すぐに判別が出来た。



「どうかしたのか?」



僕が尋ねると,ぎゅっと眉を寄せつつもココラティエは口を開く。



「さっきは怒っちゃってごめんなさい。これからは仲良くしましょ」

「……ああ。さっきのことなら気にしてない。一々謝るな」

「……それって,私がどうでもいいってこと?」



意味が分からなくて僕は再度ココラティエを見上げた。

意味不明とめんどくさいと言う感情が混ざり合い,表情に浮かぶ。



「なんでなの?! ちょっといいなって近づいただけで,なんでそんなに冷たくするの?
私,悪いことなんてしてないでしょ? 男の子にこんな侮辱を受けたのって……」


冷たくなんて微塵もしていないが



「ちょっと待て,ココラティエ」

「な,なによ」



名を呼び遮ると,ココラティエは頬を染め,警戒するような目付きで戸惑った。



「お前は何か勘違いしている。僕は,男じゃない」



だからかと,僕はようやく理解する。

求めるものがそれならば,温度差を感じるのも仕方がない。

僕はずっと同姓としての必要最低限を貫いていたのだから。

さらりと告げた言葉に,面白そうに見つめていたアイザ,ココを嗜めようと構えていたタルト,その他大勢が固まった。



「は?」

「言わなかったか? 僕は女だ。ジョセフィーネ=マリア·エレクトロ,それが忘れかけていた本名」
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