ー野に咲く花の冒険譚ー



「悪かった。でも,僕は大丈夫だ」



そんなにヤワじゃない。

ちらりとリリィを見る。

タルトの言葉に困った様子を見せていたリリィに,僕は君も間違ってないと触れた。

けれどその返答が気に食わなかったらしいタルトは,離された分距離を詰める。

僕がタルトを押したのは,特に深い意味もなく。

ただ単純に近いと感じたからだった。

けれどそれが重要なことであるように,わざわざタルトがその距離を埋める。

僕は深い影に,タルトを見上げた。



「そうじゃない。……違う,俺の言い方が悪かった。ジョン,俺はお前に頼って欲しいんだ。何かあったとき助けられる距離にいたい」

「僕だってそう出来るだけの余裕があったなら少しは報告も考えていた。それに僕はもう充分君を頼ってる」



タルトは切なそうな顔で首を振る。

僕はその瞳から顔をそらした。
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